2002 Fiscal Year Annual Research Report
唐代仏教石窟の研究-その様式と窟内の全体構想そして情報伝達経路の問題を中心に-
Project/Area Number |
02J01871
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西林 孝浩 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 降魔成道像 / 龍門石窟 / 天龍山石窟 / 唐代仏教 / 釈迦如来 |
Research Abstract |
唐代仏教石窟の研究にあたり、平成14年度は山西省の天龍山石窟をとりあげ、その様式、図像および構想の問題を中心に考察を行った。平成14年8月に実施した現地調査において、特に収穫であったのは、玄奘や義浄によって、インドから唐土へ、図像が将来されたと考えられている釈迦の降魔成道像(降魔触地印像)が、多数確認できた点である。降魔成道像の唐土における造像については、肥田路美(1985)をはじめとして、先学に既に考察されているが、近年、羅世平(1992)や久野美樹(2002)によって、従来の釈迦像から、密教や華厳と関連する尊格に更に展開していたとする見解が提出されており、これらが肯定されるならば、同尊像を配する天龍山をはじめ、龍門や四川省諸石窟など、本研究の対象となる作例の構想理解において、重要な問題を孕んでいると言わなければならない。天龍山石窟の唐代造像については、造像に直接関与した僧侶等についての資料は乏しく、こうした窟内構想の問題を同石窟のみから検証するには、困難が予想された。そこで、来朝僧や、それに関連する造像といった、検討材料が豊富な龍門石窟において尊格展開を検討し、その上で、様式や図像、配置といった造像面から、龍門と天龍山を比較することで、構想に関する情報の共有について検討するという手続きが最適と考えた。その成果として、まず「初唐期の降魔成道像-龍門東山造像を中心に-」(『京都美学美術史学』第2号、2003年)を発表した。ここで、宝冠を戴いた降魔成道像は、密教との関連性が高いことを導き出した。これをうけ、様式、図像そして配置といった面から、龍門石窟と比較しつつ天龍山石窟を検討した論考を、現在準備しているところである。
|
Research Products
(1 results)