2004 Fiscal Year Annual Research Report
断片的視覚情報の統合過程に関する比較認知科学的研究
Project/Area Number |
02J01874
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牛谷 智一 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 断片化された視覚情報 / 知覚的統合 / 認知の進化 / 種間比較 / 時空間的境界形成 / オペラント条件づけ / デンショバト / 見本合わせ課題 |
Research Abstract |
生体を取り囲む物体に関する多くの視覚情報は断片化されているが、我々ヒトはそれらを知覚的に統合して外界を認識する。この認識がどのような淘汰圧のもとで進化してきたか理解するには、現生動物を比較することが必須である。本年度は、昨年度に引き続き、断片的情報の統合処理の中でも、時間的手がかりによって表面・輪郭という空間要素が統合される時空間的境界形成という現象が、デンショバトの視知覚において成立しているかどうか、オペラント条件づけを利用して調べた。 最初に、ハトに2ないし3種の充実図形の同一見本合わせを訓練した。テストでは、高密度のランダムドットで構成される見本図形を呈示した。すなわち、図形内部に入った点だけを他のランダムドットとは違う色にしたものだった。図形が運動し、継時的にドットの色が変化していく条件では、ヒトでは、時空間的統合によって明確な形状が知覚できるが、静止している条件では、形状の知覚は比較的困難だった。ハトは、この高密度ランダムドットで構成される図形の見本合わせに困難を示し、それは、図形が運動しているときも、静止してきるときも同じだった。次のテストでは、様々なドット密度でハトをテストした。ハトは、中程度のドット密度のときにだけ、チャンスより有意に正しく見本合わせできた。ハトが空間的統合に困難を示し、ドットの並びなどの空間的手がかりだけでは、図形を正しく認識できない可能性を考えると、この結果は、ヒト・チンパンジー・フサオマキザルのデータとパラレルかもしれない。昨年度までの2年間の研究において示唆された、ハトにおける、空間的統合の困難さと、時間的統合の可能性は、いずれも本年度の研究結果と一致している。 昨年度までの研究の成果を論文としてまとめた。それらは、順次学術雑誌に受理され、掲載済み、または印刷中となった。本年度の研究も、論文として整理中であり、近日投稿予定である。
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Research Products
(4 results)