2002 Fiscal Year Annual Research Report
断片的視覚情報の統合過程に関する比較認知科学的研究
Project/Area Number |
02J01874
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牛谷 智一 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 断片的視覚情報 / 知覚的統合 / 種間比較 / 比較認知科学 / 鳥類 / 認知の進化 / 系統発生的制約 / 生態学的制約 |
Research Abstract |
時間的な要因による断片的視覚情報の統合過程現象として、複数光点の運動が階層的に体制化され、一方の光点の相対運動が知覚される、というものがある。上記研究課題の1テーマとして、ハトにおいて、運動する2光点間で運動の統合がおこなわれ、相対運動が知覚されるか調べた。斜め上45度の方向に往復運動する光点と垂直に往復運動する光点の弁別を象徴見本合わせで訓練した。テストでは水平方向に運動する別の光点(付随光点)を軌道が交わるように付加した。このとき、斜め方向の運動が垂直方向に運動するように知覚されていれば、ハトは垂直運動に連合したシンボルにマッチングすると考えられた。同様に、垂直方向の運動が斜め方向に運動するよう知覚されていれば、斜め運動のシンボルへマッチングすると考えられた。統制条件として斜め運動の光点とは離れた場所で付随光点が運動している条件を設けた。付随光点がターゲットと関係のないところを運動していても、ターゲットの運動の見えは変化しないと考えられた。この実験の結果、ハトは、垂直運動に対して垂直のシンボルを、斜め運動にたいして斜めのシンボルを、それぞれマッチングした。ハトは、光点の運動の絶対方向しか答えておらず、複数光点の運動を統合しているとは言えなかった。運動領域をせまくしたり、運動を滑らかにしたり、また、付随光点を2つにしてターゲットの上下に呈示したりして、体制化しやすいように刺激の属性を変えても、この結果は変わらなかった。そこで、ターゲットと同期して運動する参照枠を呈示した。結果、ハトは、ターゲットの運動を絶対運動とは逆のシンボルにマッチングした。ハトが相対運動を知覚することが示された。このように、ハトが知覚レベルで断片的視覚刺激を体制化しているという報告は、世界でもまれな報告である。これからの種間比較をおこなう上で、重要なデータを得ることができた。
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