2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01880
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶 さやか 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近代史 / ナショナリズム / 地域研究 / ポーランド:リトアニア:ベラルーシ:ウクライナ |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き、ロシア領域ポーランド=リトアニアにおいて、文化・教育面の自治に大きな役割を果たしたヴィルノ大学(1831年に閉鎖)の活動について考察を進めた。そのため、科学研究費補助金を用いて、国内での文献収集のほか、ポーランドとリトアニアへも赴いて、ヴィルノ大学やその知識人、19世紀前半当時に書かれたリトアニア史等に関連する研究文献・史料の収集を行った。本研究では、ヴィルノ大学およびその知識人を、彼らの言語によらず地域のエリートとして位置付け直し、史料及び先行研究によりながら以下のことを明らかにした。この地域では、ポーランド化した貴族が言語や宗教の異なる民衆を支配していたが、ヴィルノ大学は支配層に従来と変わらぬポーランド的な教育を保障し、主に支配層出身の知識人を生み出しただけでなく、彼らのあいだに地元の民衆文化への関心を生んだ。無論、こうした関心には啓蒙の世代とロマン主義の世代で温度差があったことは指摘できる。また、19世紀前半には当大学関係者によって、実証的な歴史学の基礎が築かれただけでなく、ポーランド史とは別個のリトアニア史が書かれ始め、リトアニアのナショナル=ヒストリーの原型も現れるなど、歴史認識においても重要な変化があった。知識人層はポーランド語による文化の枠内に留まりつつも地域との紐帯をもち、また少数ながら彼らによって民衆の言語(リトアニア語・ベラルーシ語)による歴史・文学関連の出版も行われるようになったのである。こうしたヴィルノ大学の知識人については、2004年5月の西洋史学会での発表を準備中である。
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