2004 Fiscal Year Annual Research Report
資源開発をめぐる民族と国家の動態:エチオピア西部でのコーヒー栽培の拡大過程から
Project/Area Number |
02J01899
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 圭一郎 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エチオピア / コーヒー / 資源 / 民族間関係 / 国家政策 / 商品作物 / 開発 / 土地所有 |
Research Abstract |
本研究の目的は、エチオピア西部のコーヒー栽培地帯をおもな調査地として、農業資源開発の浸透にともなう民族と国家との動態的関係を明らかにすることである。 最終年度である平成16年度は、これまでの現地調査によって収集したデータと研究発表を通して分析を深めてきた成果をもとに、コーヒー栽培が浸透していく過程で生態環境や民族関係・経済活動にどのような変化が起きてきたのかを他のアフリカ社会の事例や人類学的な先行研究との比較分析のなかで検討を進めた。とくに、資源の所有と分配という視点からアフリカにおける農耕民研究や狩猟採集民研究、人類学における土地所有に関する研究をふまえて、商品作物栽培という農業資源開発の進展がどのような社会変容をもたらしたのか考察を行った。 その結果、エチオピアのコーヒー栽培農村では、現金の流入を背景として、土地から生み出された富に「分配される富」と「独占される富」というふたつの経済領域が生じているという分析を提示した。しかも同じ作物であっても、その種類や文脈に応じて異なる社会的意味を担っており、市場経済に取り込まれながらも、なお富の分配が「商品生産」との相対的な位置を占めていることを見出した。また、コーヒー栽培の拡大とともに多様な民族集団が移り住むようになり、農村が複合的な他民族社会に変化してきたことで、呪術の興隆やそれにともなう富の分配の活性化という現象が明らかになった。 これらの研究成果は、今後、グローバリゼーションの進行にともなう社会変容や民族間関係の変化を考察するうえでも、今後ますます重要となるものであり、さらなる研究の進展が求められる。
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Research Products
(1 results)