2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01926
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 穣 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子液体 / ヘリウム3 / 超流動 / 量子渦 |
Research Abstract |
空孔率98%エアロジェル中の超流動ヘリウム3の状態を東京大学物性研究所久保田研究室にある、超流動ヘリウム3を毎秒一回転の速度にまで回せることのできる世界唯一の、回転核断熱消磁冷凍機を用い核磁気共鳴法で調べた。エアロジェルという物質はヘリウム3の超流動緩和長よりも短い紐状の物質が空間中をランダムに張り巡らされた形状をしており、超流動ヘリウム3における不純物効果の研究や、ランダムポテンシャル中のコヒーレント状態の研究などが近年盛んに行われている。我々は回転させることにより超流動ヘリウム3の織目構造や渦に対するエアロジェルの影響を調べた。 超流動ヘリウム3B相においてNMRスペクトラムの回転変化からエアロジェル内の超流動速度場を観測することに成功した。その回転依存性はエアロジェルのない状態とはまったく違った振る舞いを示すことがわかった。これは超流動速度場を生み出す元となっている超流動ヘリウム3の量子渦が、エアロジェルによって強くピンされていることによるものであると考えられる。我々は観測された回転依存性を説明するような量子渦の分布についてのモデルを考案し、実験結果をうまく説明することに成功した。そのモデルでは渦は両端がピンされた状態にあり、そのピン間隔できまる臨界速度を超えてようやく渦は別のところに移動できると考えた。これは第二種超伝導体中の磁束がピンされる機構などと関連付けられると考えられる。 超流動ヘリウム3A相においては中に形成される織目状態が回転の影響をまったく受けないことがわかった。これはA相に存在するエネルギーギャップがB相の渦と同様にピンされているからだと考えられる。 このように不純物がある系でのヘリウム3の織目構造や渦についての新しい知見を得ることができた。
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