2004 Fiscal Year Annual Research Report
水中での疎水性反応場における加速効果の有機合成への利用
Project/Area Number |
02J01960
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 英典 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 水-酢酸エチル二相系 / π-アリルパラジウム種 / 辻-トロスト反応 / アリルアルコール / 中・大員環ラクトン / 環化反応 / 疎水性有機分子 / 水 |
Research Abstract |
(1)水が可能とする活性化剤を全く用いないアリルアルコールの辻-トロスト反応への直接利用 通常有機溶媒中では困難とされているアリルアルコールからのπ-アリルパラジウム種の直接調製が、水中では複雑な系を用いなくても容易に行えることを見いだした。そこで、アリルアルコールをアリル源とする辻-トロスト反応を検討した結果、水-酢酸エチル二相系が最もよい結果を与えることが明らかとなり、種々の求核剤との反応が高収率で進行することを明らかとした。この理由として水中ではヒドロキシ基に対して水が水和するため、他の有機溶媒に比べ脱離がおこりやすいと考えられる。このことは、計算化学の手法を用いた考察を行うことによっても支持される結果を得ている。この結果により水の有機合成への利用価値を示す例を提示できたと考えている。 (2)水-酢酸エチル二相系での中・大員環ラクトン合成 上述したように水-酢酸エチル二相系で辻-トロスト反応が可能であることを受け、水-酢酸エチル二相系で辻-トロスト反応を用いる中・大員環ラクトン合成を行った。中・大員環ラクトン合成は環化反応の中でも難しい反応であるが、この二相系で反応を行うと高収率で中・大員環(9〜13員環)ラクトンが得られることを明らかにした。また、この二相系反応では基質のオレフィン部位の立体化学が保持された生成物が得られることも述べている。 通常中・大員環合成の際には高希釈条件やスロードロップといった特別な操作を駆使しても収率よく目的の環化体を得ることは難しい。しかし、ある種の疎水性有機分子は水に溶けにくいが、ごく少量は水中に存在できるという性質を利用したものである。これも水の特徴をうまく利用した例と言える。
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Research Products
(2 results)