2003 Fiscal Year Annual Research Report
生体内の分子間ネットワークの人工制御を目指した新規機能性蛋白質の創製
Project/Area Number |
02J01965
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平 就介 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生物機能科学 / 生物無機化学 |
Research Abstract |
本研究では、生体内のヘム濃度を感知してヘム分解酵素の発現を制御するヘム応答性の転写制御因子Bach1の働きに注目し、生化学的・構造生物学的見地から解析を進めてきた。昨年度からの培養条件や精製法の改良によってBach1をmgオーダーで大量に精製する方法を確立し、本年度はヘムに注目した各種分光測定を行うことでDNA結合を制御するヘムの配位構造の解析を行ってきた。その結果、分光学的性質からBach1には少なくとも一つはシステインを軸配位子にもつ2種類のヘム結合部位をもつことが明らかとなった。 このヘム結合とDNA結合制御の関係をより詳細に調べるため、Bach1のパートナーであるMafKタンパク質との複合体として精製を試み、この高純度試料を得ることに成功した。現在、この精製試料と蛍光標識したDNAを用いて異方性の変化を測定し、複合体とDNAの結合について定量的な解析を進めている。また最近になってヘムとの特異的な結合がDNAとの結合だけでなく、Bach1の細胞内輸送にも関わっていることが明らかとなってきた。そこでBach1変異体の作成や紫外可視吸収などの分光測定を行うことでヘム結合部位の同定を試みており、これまでにヘム結合(Cys-Pro)モチーフの1つがこの結合に関与していることが明らかとなった。 こうした比較的解析の容易なヘムを手がかりとして転写因子が関与する反応の素過程を一つ一つ明らかにし、Bach1の生物化学的な全体像を明らかにすることができれば転写因子による遺伝子発現調節メカニズムのプロトタイプを確立することができると考えている。
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