2003 Fiscal Year Annual Research Report
双安定性複核錯体モジュールを用いた高次元錯体集積体の構築
Project/Area Number |
02J01977
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
望月 勝紀 京都大学, 工学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 錯体化学 / 複核 / 金属間結合 / 電子構造 / 遷移金属 / カテコラート / 酸化状態 / 非局在化 |
Research Abstract |
本研究では、カテコラート誘導体を配位子として用い、金属間に直接結合を有する複核錯体の合成及びその性質に関する研究を展開してきた。その研究成果は以下に要約される。 1)大きなアニオン場の形成による非架橋型金属間結合の安定化及び高酸化状態の安定化 従来、金属イオン間の直接結合は、配位子による直接的な架橋構造を形成することで構造を安定化させてきた。一方、配位子による架橋構造をもたない非架橋型の金属間結合は一般に不安定であるが、本研究では2-の電価を有するカテコラートを配位子として用い、二核金属コアの周りに大きなアニオン場を形成するという手法により非架橋型金属間結合を安定化できることを明らかにした。加えて、遷移金属にルテニウムを用いた場合、これまでに報告されていない7+の酸化状態の二核金属コアを有する錯体の安定化及び単離に初めて成功し、8+の酸化状態のコアを有する錯体の形成をも示唆する結果が得られた。 2)非架橋型金属間結合の柔軟性の証明 非架橋型金属間結合が配位子の置換基の設計により、合理的にその結合長及び結合のねじれを制御できることを明らかにし、架橋型の金属間結合よりも高い構造柔軟性を有することを明らかにした。 3)新規電子構造の形成(オービタルエンジニアリング) 本研究の対象となる錯体ではカテコラートのπ起動は金属間結合のπ軌道とオーバーラップを形成しそのエネルギー準位を制御する。このため非架橋型錯体では配位子場を強めることで金属間結合のπ軌道とδ軌道、δ*軌道の間にエネルギー準位の逆転が生じることを明らかにした。
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