2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝性腎疾患モデルマウスを用いたエリスロポイエチン産生制御機構の解明
Project/Area Number |
02J02004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 美鈴 (山口 美鈴) 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 腎性貧血 / エリスロポイエチン / ICGNマウス / 腎臓 / 骨髄 / 鉄欠乏 / 溶血 / タンパク尿 |
Research Abstract |
ICR系マウスの突然変異体であるICR-derived glomerulonephritis (ICGN)系マウスは、遺伝性腎炎症候群の病態モデルとして、国立感染症研究所にて確立され、遺伝性腎疾患の病因研究に有用である。慢性腎疾患においては、貧血が病態早期から現れる重篤な合併症(腎性貧血)であるが、発症機序の詳細は適した自然発症性モデル動物が少ないため未解明である。本研究では、ICGNマウスが腎性貧血の適切なモデルであることと、腎機能障害進行と腎性貧血発症の関連性および誘因について明らかにした。まず、雄性ICGN系マウス(20〜30週齢)を血清中クレアチニン値にて未発症期、発症初期と末期の3群に分類し、また健常対象として同週齢の雄性ICRマウスを用いた。BrdU投与(100mg/kg,ip)2時間後、エーテル麻酔下にて採血を行い、迅速に臓器(腎・肝・脾・骨髄)を摘出し、血清生化学検査と病理組織化学的解析を行った。また、尿に漏出するタンパクをELISA法とWestern blot法にて検出した。その結果、ICGNマウスでは発症初期において、Ht値・ヘモグロビン量・赤血球数が有意に減少し、正球性正色素性貧血(腎性貧血)を発症していることが確認された。発症末期では、血清中鉄濃度の低下、脾臓での溶血、そして尿への鉄結合タンパク質の漏出を伴う小球性貧血を示し、鉄欠乏もICGNマウス貧血の誘因であると推察される。赤血球産生を促進するサイトカインであるエリスロポイエチン(EPO)の不足がICGNマウスの腎性貧血の原因か否か検討するために、ヒト組換型EPOを5日間反復皮下投与した。その結果、貧血は有意に改善され、末梢血中内因性EPO濃度は低下した。骨髄と腎においてヒト組換型EPO投与による組織学的変化は認められず、ICGNマウスにおける腎性貧血はEPO受容体やその下流のシグナル伝達系に欠陥はなく、EPOの不十分な産生に起因すると考えられる。血清中EPO濃度を調べたところ、ICGNマウスでは貧血の程度に見合ったEPO濃度を示さず、また腎疾患進行に伴って尿中にEPO漏出を認めた。以上の結果より、ICGNマウスの腎性貧血においてはEPO産生が不十分であり、タンパク尿の重篤化も、貧血の進行に関与すると考えられる。
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[Publications] Misuzu YAMADA-YAMAGUCHI: "Anemia with Chronic Renal Disorder and Disrupted Metabolism of Erythropoietin in ICR-derived Glomerulonephritis (ICGN) Mice"The Journal of Veterinary Medical Sciences. 66巻4号(in printing). (2003)
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[Publications] Misuzu YAMADA-YAMAGUCHI: "Improvement of Anemia Associated with Chronic Renal Failure by Recombinant Human Erythropoietin Treatment in ICR-Derived Glomerulonephritis (ICGN) Mice"The Journal of Veterinary Medical Sciences. 66巻7号(in printing). (2003)