2004 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝性腎疾患モデルマウスを用いたエリスロポイエチン産生制御機構の解明
Project/Area Number |
02J02004
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 美鈴 (山口 美鈴) 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | エリスロポイエチン / ICGNマウス / 腎性貧血 / 腎臓 / 慢性腎疾患 / in situ hybridization法 / エリスロポイエチン産生細胞 / 低酸素 |
Research Abstract |
遺伝性腎疾患(ICR-derived glomerulonephritis mouse : ICGN mouse)マウスは、数少ない自然発症性の腎疾患モデルで、遺伝的素因の解明や腎疾患発症機構の究明において有用である。本研究では、ICGNマウスが優れた腎性貧血病態モデルであることとその発症機構を生化学的手法および組織細胞化学的手法を駆使して明らかにした。腎病態の進行に伴ってICGNマウスでは、正球性正色素性貧血(腎性貧血)を呈することが確認された。発症末期においては、鉄欠乏もICGNマウスの貧血進行の誘因であった。またICGNマウスでは、赤血球産生を促進するサイトカインであるエリスロポイエチン(erythropoietin ; EPO)が、貧血の程度に見合った血清中濃度を示さず、ヒト組換型EPOの皮下投与により貧血が有意に改善された。腎病態の重篤化に伴って尿中にEPOが漏出し、EPO-mRNAの発現が主たる産生場所である腎臓ばかりでなく、代償的に肝臓でも起こることからICGNマウスにおける腎性貧血は腎臓での不十分なEPO産生に起因すると考えられた。 EPOの主要な産生部位は腎であるが、腎における産生細胞は未だ確定されておらず、その産生制御機構は未知の部分が多い。本研究では、高感度in situ hybridization (ISH)法にて、放射性プローブでは同定が煩雑かつ困難であったEPO産生細胞を再現性よく高感度に検出することに成功した。EPO産生細胞は腎皮質中間部尿細管の間質に分布しており、健常対象のICRマウスと腎疾患を発症するICGNマウス間では産生部位に違いは認められなかった。低酸素(7%O_2)によるEPO産生を誘導したところ、ICRマウス・ICGNマウスともに、EPO-mRNA量およびEPO産生細胞数は増加したが、ICGNマウスではタンパク質レベルのEPO増加が抑制されていた。したがって、ICGNマウスの腎性貧血は、腎臓でのEPO産生細胞のタンパク質翻訳調節機構の異常によるものと推測された。
|