2003 Fiscal Year Annual Research Report
平面内細胞極性の形成:7回膜貫通型カドヘリンが制御するシグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
02J02022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 裕子 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 平面内細胞極性 / ショウジョウバエ / 7回膜貫通型カドヘリン / Frizzled / Flamingo / 透過電顕 / 免疫電顕 / 微小管 |
Research Abstract |
本研究は、発生過程における細胞のパターン形成の1つとして、上皮平面内に発達する平面内細胞極性(planar cell polarity, PCP)の形成過程に注目し、その分子機構を解明することを目指している。 我々は、PCPを制御する分子の1つであるFrizzled (Fz)に蛍光タンパク質を融合させた分子(Fz::GFP)の挙動を生細胞で追跡した結果、細胞質に存在する粒状のシグナル(Fz::GFP particle)が細胞の遠位側境界に一過的に偏って運ばれることを見出した。そこで、Fz::GFP particleを遠位側に運ぶための細胞内構造を探す目的で、透過電子顕微鏡を用いて、PCP形成時のショウジョウバエ翅細胞を観察した。 Fz::GFPやFlamingo (Fmi)などの極性制御分子が局在する接着帯構造(adherens junction, AJ)付近には、アクチン線維に加えて微小管が多く配列していた。興味深いことに、それらの微小管はFz::GFPやFmiが偏り始める時期において、細胞の遠近軸と平行に配列していた。一方、PCP形成が行われた後には、これらの微小管の配列は見られなかった。さらに、免疫電顕を用いてFz::GFPやFmiのシグナルを検出したところ、微小管上に金粒子を帯びた小胞が乗っている像が観察された。 以上の結果は、Fz::GFPがAJ平面において、微小管レールに乗って遠位側に選択的に運ばれる可能性を示唆している。今後は、微小管(脱)重合阻害剤を翅に注入したときの効果を検討する他、微小管ダイナミクスを制御するいくつかの分子がFz::GFPの輸送に及ぼす効果を調べる。 本年度の研究では、PCP制御分子が細胞内で偏る分子機構に微小管ダイナミクスが関わる可能性を新たに提示することができた。来年度は、これらの可能性を引き続き検証することで、PCP形成の分子機構をさらに追求できるものと考えている。
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Research Products
(1 results)