2002 Fiscal Year Annual Research Report
ワーキングメモリの脳内活動ダイナミクスを説明する神経回路網モデル
Project/Area Number |
02J02026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南 哲人 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ワーキングメモリ / 前頭前野 / リカレントネットワーク / 形態と位置の情報統合 / 領域特異性 / 実時間リカレント学習 / ルールの適用 / 高次認知 |
Research Abstract |
認知における前頭前野の主な機能は,関連する情報をオンラインで保持するワーキングメモリとしての機能である.Raoら(1997)は前頭前野において,形態と位置の両情報に応答するニューロンの存在を確認した.本研究では,その脳内メカニズムを明らかにするために,ワーキングメモリのニューラルネットワークモデルを提案し,生理学実験結果のシミュレーションを行った.その結果,Raoら(1997)で示された形態と位置の両情報に応答するニューロンの発火パターンを再現できた.さらに3つのモデル構造における結果を比較することにより,ワーキングメモリの領域特異性に関する考察を行い,前頭前野ワーキングメモリには領域特異性がないことを構成論的手法により示した. 次に,前頭前野ワーキングメモリの数多い認知機能の中で,ルールの符号化に注目した.Wallisら(2001)は,'match'ルールと'non-match'ルールという2つのルールを使用するように訓練されたサルの前頭前野皮質中の単一のニューロンから記録することにより,ルール符号化の神経基盤を調べた結果,学習したルールに選択的に反応するニューロンを見つけた.しかしながら,ルールに基づいた行動の機構については明らかにされていない.また,生理実験で示されたようなルール選択的なニューロンの機能的な役割は解明されていない.そこで,脳がルールに基づいた行動をどのように実行するか調べるために,Wallisら(2001)の生理実験結果のシミュレーションを行い,モデルの隠れユニットの時間パターンと結合荷重を分析し,その特性を生理実験結果と比較した.その結果,結合荷重の分析を通じて,ルールに基づいた遅延見本合わせ課題を行うときの前頭前野の機構を明確にし,ルール選択的なニューロンの機能的な役割を解明することができた.
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Research Products
(1 results)