2002 Fiscal Year Annual Research Report
企業間関係の中のリスク分散・共有と産業競争力:ベトナム繊維産業の研究
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02J02084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 健太 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ベトナム / 地域研究 / 経済発展 / 繊維産業 |
Research Abstract |
平成14年度は、ベトナム国内市場および輸出市場向け繊維・縫製品の生産と流通構造について調査研究を行った。ハノイ市およびホーチミン市において国有企業・民間企業調査を実施し、生産形態の類型化とそれにまっわるリスクを明らかにした。輸出向け市場の繊維・縫製品の生産と流通の主要な担い手である国有企業は、資材を海外から輸入し、安い労働力を使って縫製品を生産し、完成品を輸出するという賃加工ベースの委託加工輸出が主要な生産・流通形態である。一方、国内の縫製品市場は著しく未発達であるが、南部のホーチミン市を中心に中小の民間企業による資材の自己仕入による縫製品の生産と流通が行われており、その活動は拡大しつつあることも明らかとなった。このような状況下で、ベトナム政府は上流への積極的な資金投資による付加価値の増大を目指している。しかし、この政策が成功するのが難しいと考える。その主な理由としては、縫製品の付加価値増大は上流部門の強化によるのではなく、下流部門(縫製部門)それ自体の強化にあるべきであり、その意味では委託加工を中心とした縫製品の輸出に従事する国有企業の、付加価値上昇に必要なリスク吸収力が未発達であることは決定的である。また、輸出市場に対応が出来るほど、国内の繊維縫製産業にリスクを分散し、共有するシステムが育っていないという点も重要であり、その点から言えば国内市場の開拓こそが重要な政策課題である。上記の研究成果は、2003年3月に日本評論社より刊行された『ベトナムの工業化戦略:グローバル化時代の途上国産業支援』(大野健一・川端望編著)に「第5章:繊維・縫製産業-流通未発達の検証」として所収された。
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