2003 Fiscal Year Annual Research Report
冷却カルシウム原子を用いた精密原子干渉計の開発と時間標準への応用
Project/Area Number |
02J02139
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
本多 和仁 東京理科大学, 理工学部物理学科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 原子干渉計 / アルカリ土類 / カルシウム / 2色場 / 3準位 / 白色光減速法 / 原子光学 / レーザー冷却 |
Research Abstract |
時間標準は世界各国に存在し、その装置間の時間合わせや比較が重要となる。時間標準同士の比較には電波通信を用いる方法があるが、どうしても遅延が存在してしまう。そこで可搬型の時間標準があれば遅延なしに精度の評価が行えることが期待できる。しかし、現在の時間標準は大規模なレーザー光源や真空槽が必要となる。そこで、当研究ではレーザー光源や真空槽、レーザー冷却法を工夫し、可搬型の冷却カルシウム原子時間標準の開発を目標としている。これまでに、700℃の熱カルシウム原子ビームから直接、レーザー冷却法の基底となる方法である磁気光学トラップで10^6個程度のカルシウム原子を捕捉した。 しかし、熱原子ビームをあらかじめ減速できれば、さらに多くの原子を捕捉することが可能になる。原子を減速する場合には、ドップラー効果による原子と光の共鳴周波数のドップラー効果によるずれを補償する機構が必要で、一般には磁気によるゼーマン分裂を利用したゼーマン減速法を用いる。しかし、それには大きなコイルが必要になり、この研究の目的に合致しない。そこで、当研究では白色光減速法を用いることにした。これは、光の周波数分布を作為的に広げることでドップラー効果を補償する方法である。電気光学変調器により光の周波数分布を広げるなどした結果、カルシウム原子を10^7個程度捕捉することに成功した。 一方、時間標準は原子の波動性を利用した「原子光学」的装置であるが、近年この分野で希薄原子気体のボース-アインシュタイン凝縮が達成されて以来、原子光学の発展が著しい。その基礎知識と最新の成果の敷衍のために、P.Meystreによる「Atom Optics」を邦訳した。 また、原子干渉計の様式のひとつ、光の2色場と原子の3準位の相互作用を利用した2色場3準位原子干渉計に対する理論的解析を論文にまとめ、公表した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Y.Takasu, K.Maki, K.Komori, T.Takano, K.Honda, M.Kumakura, T.Yabuzaki, Y.Takahashi: "Spin-Singlet Bose-Einstein Condensation of Two-Electron Atoms"Physical Review Letters. 91. 040404 (2003)
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[Publications] K.Honda, S.Yanagimachi, A.Morinaga: "Three-level atom interferometer with bichromatic laser fields"Physical Review A. 68. 043621 (2003)
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[Publications] P.メスター, 盛永篤郎, 本多和仁: "原子光学"平野皓正. 334 (2003)