2002 Fiscal Year Annual Research Report
味覚調節の分子機構-ガストデューシンRGSのクローニング-
Project/Area Number |
02J02189
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
増保 生郎 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 味覚 / 脱感作 / Adaptation / 味細胞 / Gタンパク / ガストデューシン / RGS / STC-1細胞 |
Research Abstract |
私たちは、甘いものを食べたあとに、また甘いものを食べるとその甘味が弱く感じることを経験する。この現象は、Adaptationと呼ばれている。また同時に、他の味も感じ難くなることが知られており、Cross-Adaptationと呼ばれている。現在、甘味と苦味は、味を受容する細胞である味細胞上の七回膜貫通型受容体に受容され、味細胞特異的Gタンパクであるガストデューシンを介して伝達されることが知られている。近年、このようなGタンパク共役反応の脱感作現象を起こす因子として、イーストのフェロモン脱感作因子として見出されたRGSタンパクが注目されている。本研究では、甘味と苦味のAdaptationとCross-Adaptationは、ガストデューシンに対するRGS(ガストデューシンRGS)の働きで説明できるのではないかと考え、ガストデューシンRGSのクローニングを目的としている。 味覚は五感の中でも、その受容の分子的な機構の理解が遅れている。その原因として、味物質を受容する細胞である味細胞の数が非常に少ないこと、さらに味細胞の培養が難しいことが上げられる。そこで、味細胞の培養系の確立、さらには味細胞の細胞株の樹立を試みた。酵素処理により舌の上皮を剥ぎ、上皮から味らいを単離し、DMEM/F12に上皮細胞のマイトジェンであるコレラトキシンとEGFなどを添加した培地で培養することによって、味らい中に含まれるガストデューシンポジティブ細胞を効率よく培養することに成功した。つぎに、ニューロンの細胞株の樹立に成功したことが報告されているp53ノックアウトマウスを用いた系を利用し、味らいを含む組織由来の細胞の不死化に成功した。この不死化細胞の中にガストデューシンを発現し、味物質に反応する細胞が含まれているか、解析中である。 また、ガストデューシンRGSのクローニングを試みた。RGSは30種近くにおよぶ分子種が知られ、すべてのRGSが良く保存されたRGSドメインを共有している。そこで、味らいとSTC-1細胞から抽出したRNAからcDNAを合成し、RGSドメインに対する混合プライマーを用いてRT-PCRを行なった。STC-1細胞は、小腸由来の細胞株にもかかわらず苦味受容体とガストデューシンを発現し苦味物質に反応するモデル細胞である。すると、STC-1細胞由来のRNAよりPCR産物が得られ、その中に既知のRGSであるRGS2、RGS4、RGS9が含まれていた。さらに特異的プライマーを用いて、味らいにもこれら3種類のRGSが発現していることを見出した。RGS9は、網膜特異的Gタンパクであるトランスデューシンの制御因子である。網膜と脳に発現が確認されているが、それ以外での発現は報告されていない。トランスデューシンはガストデューシンと非常に類似性が高いことから、RGS9がガストデューシンを制御しているガストデューシンRGSである可能性が考えられる。
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