2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J02262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
富谷 朗子 京都大学, 総合博物館, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 光合成生物 / 進化 / 分子系統学 / 化石 / 地球環境 / シアノバクテリア / 形態 / 多様性 |
Research Abstract |
ラン色細菌の初期進化、特に多様化の過程を明らかにするため、以下の研究を行った。形態学的な多様性を考慮して選んだラン色細菌21種から、本研究代表者によって単離された16S rRNA、rbcL、hetR遺伝子の塩基配列に基づき、分子系統解析を行った。非糸状性ラン色細菌、原核緑藻類、およびゲノム情報の公開されているラン色細菌の既知遺伝子配列を加えて分子系統樹を作成したところ、いずれも糸状性および窒素固定能は多系統的である一方、異質細胞を持つ種は単系統であるという仮説を支持した。この分子系統樹に原生代の微生物化石(20,16.5,15億年前)の化石の観察結果、および地球化学的な研究から示唆される地球古環境の情報を考慮すると、分化した細胞を持つラン色細菌は24〜20億年の間に出現したと考えられる。現在、ラン色細菌の形態的進化の時期をさらに詳しく調べるため、古生代の微化石の研究準備を進めている。 一方で、ラン色細菌の形態の多様化の分子的メカニズムを明らかにするため、ラン色細菌のモデル生物を用いた生理学的・分子生物学的実験に着手した。この生物は、ユレモ目のラン色細菌に見られる4つの細胞形態を全て持っており、またゲノム情報も得られつつあることから、分子生物学を用いた発生学的な研究に適している。現在、さまざまな条件下で細胞株を培養し、細胞分化と生理学的・物理的な環境の変化との対応を調査中である。 本研究を行うにあたっては、英国リーズ大学微生物学教室のD.G.Adams博士に便宜を図って頂いた。
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