2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J02262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
富谷 朗子 京都大学, 総合博物館, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | ラン色細菌 / 形態形成 / 細胞分化 / ホルモゴニア / 化石 / 進化 / 共生 / 原核生物 |
Research Abstract |
ラン色細菌の初期進化過程を明らかにするため、以下の研究を行った。 まず、ラン色細菌が多様な形態を獲得した進化的背景を明らかにするため、ラン色細菌の形態形成の分子機構の解明を目指し、生理学的・分子生物学的実験を行った。材料にはラン色細菌の中でも細胞が4種類の形態に分化するラン色細菌ユレモ目のモデル生物種Nostoc punctiformeを用いた。始めに、培地の組成や照度、宿主植物の存在などを変えた様々な条件下でシアノバクテリア細胞株を培養・観察し、細胞分化と生理学的・物理的な環境の条件を明らかにした。その結果、培地中の硝酸体の有無と宿主植物の存在がシアノバクテリアの細胞分化に大きな影響を及ぼすことがわかった。次に、この条件を用いて、糸状性ラン色細菌の4つ分化細胞の一つであるホルモゴニアの分化に関与すると見られる新規遺伝子を7つ単離した。現在、その遺伝子の性質や機能を詳しく調べるため、実験や観察を続けている。なお本研究を行うにあたっては、英国リーズ大学生化学・微生物学教室のD.G.Adams博士に便宜を図って頂いた。 一方で、ラン色細菌の形態的多様化の時期をさらに詳しく調べるため、古生代の微化石の観察を行った。5月に英国自然史博物館・古生物学部門を訪問し、約4億年前のスコットランド産の岩石から発見された、ラン色細菌と考えられる収蔵標本を観察し、分類を再検討した。また、その化石の産地である英国アバディーン地域を9月に訪問し、化石の発掘現場を訪れると伴に、アバディーン大学の植物化石研究者等と議論をかわした。
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