2003 Fiscal Year Annual Research Report
現代政治思想におけるヘーゲル解釈を手がかりとする他者の関係性に関する研究
Project/Area Number |
02J02355
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
面 一也 横浜国立大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヘーゲル / 政治思想 / ソフィスト / プラトン批判期対話篇 / ヘラクレイトスとパルメニデス / あるとあらぬ / 具体的現在と具体的同一性 / 自由 |
Research Abstract |
本研究は三部より構成されるが、そのうち今年度は、ヘーゲルの政治思想が多様性の涵養を志向することを論証する第二部に関して考察をおこなった。とりわけ、昨年度に発表した査読論文の執筆によって、ヘーゲルが本研究の鍵概念たる時間および同一性概念を、他者の道具化に伴って多様性を枯渇させるソフィスト的思考との対決を通じて獲得しているとの知見を得たため、今年度はこの点を主題的に考察した。 その最初の成果は、下欄「11.研究発表」に記した個人研究報告に結実した。その後、昨年度以来交流のあるH.マイアー教授(ミュンヘン大学)より在外研究の許可を得て渡独したのち、本報告に大幅な加筆と修正を施しつつ、論文「ヘーゲル政治思想におけるソフィスト的思考との対決-プラトン批判期対話篇との対照を通して-」を完成させた。なお本論文は、完全査読制となった『早稲田政治経済学雑誌 第3号』(16年6月刊行予定)に投稿中である。 さらに以上の考察を通じて、(1)両世界大戦以降に、他者を圧殺する独裁政治とヘーゲル政治思想との影響関係を、古代期にまで遡及させて論じる注目すべき論争が出現するも、かれの時間および同一性概念に十分な考慮がなされず、その一面的なヘーゲル理解が戦後の諸思潮にも継承されること、しかし他方で、(2)その影響下にある現代政治思想のうち、リベラリズムとポストモダンという代表的諸思潮の内部から、他者の排除をめぐる問題への解決の糸口を、それまで否定的に解釈され続けたヘーゲルのうちに改めて読み取ろうとする逆説的言説が、萌芽的とはいえ登場しつつあること、という2つの展望を得た。来年度はこの点に着目しつつ、ヘーゲルの政治思想が他者との関係性をめぐる問題に関して今日的意義を有することを論証する第三部の考察を進めるとともに、本年度までに検討された第一部・第二部の考察を総括しながら、本研究全体を完成させる予定である。
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Research Products
(1 results)