2002 Fiscal Year Annual Research Report
雁金屋関連資料における小袖意匠について〜東福門院の小袖を中心に〜
Project/Area Number |
02J02494
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
花房 美紀 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 小袖 / 東福門院 / 呉服屋雁金屋 / 子供 / 女中 / 家紋 / 贈答 |
Research Abstract |
本年度予定していた文献調査と、次年度に予定していた染織品調査の一部を行った。 まず、東福門院の交流関係、周辺人物の来歴、当時の文化的様相を調べるため、近世の公家日記・記録・家譜を閲覧した。また、子供の衣服を考察するため、同時代の親王・内親王・公家武家子息の儀礼(色直し・髪置き・深曾木等)に関する記録類を閲覧した。(於:東大史料編纂所・宮内庁書陵部・金沢市立玉川図書館他) その結果、雁金屋文献には東福門院の娘・孫娘・養子・女中衆の注文が含まれていること、季節贈答・子供の成長儀礼に関わるもの、「踊り」衣装も含まれていることが判明した。 さらに同時代の小袖贈答と、女性の小袖注文における役割を理解するため、柳川藩主立花氏夫人が呉服屋宛てに送った手紙「冨士谷文書」を閲覧した。(於:九州文化史研究施設) そして、東福門院の小袖意匠を現存する染織品から考察するため、所用の伝来を持つ染織品と、同時代の制作時期の明らかな染織品を調査した。(於:東京国立博物館・国立歴史民俗博物館・神奈川県立歴史博物館・財団法人松井文庫) その結果、東福門院の小袖には金糸と生地に特徴があることが判明した。 また、調査の過程で次の二点の論考をまとめることができた。まず、雁金屋文献における「左巻」「筋」文様を分析し、表現の変遷を考察した。既に論文にまとめており、美術史学会発行編集『美術史』(平成15年9月発行155号掲載分)に投稿する。 そして「尾形宗謙呉服誂物帳」における人名と注文宛先について特定することができた。この文献は、東福門院の女中衆が武家や社家へ嫁いだ妹たち宛てに行った個人的な注文である。特に子供の衣服には家紋が数多く用いられている。武家服飾と家紋、家族への衣服注文といった視点は東福門院の小袖意匠を考察する上で極めて重要な要素と考えており、近日学会にて発表予定である。(風俗史学会予定)
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Research Products
(1 results)