2003 Fiscal Year Annual Research Report
雁金屋関連資料における小袖意匠について〜東福門院の小袖を中心に〜
Project/Area Number |
02J02494
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
花房 美紀 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員DC2
|
Keywords | 小袖 / 東福門院 / 呉服屋 / 雛形本 / 躍り / 季節贈答 / 下賜 / 近世前期 |
Research Abstract |
これまで当資料は一部翻刻掲載され、東福門院周辺の呉服注文書として関心が寄せられてきた。 しかし原本は、表記が雑然としており、綴り直されて内容も錯簡している。又東福門院との関連も、記録類による検討に及ばず、意匠の様式分析に留まってきた。 そこで本研究では、まず、原本を観察して復原・整備し、記述内容を公家・武家の日記・記録類によって裏付け、意匠内容を考慮しながら、資料の基礎情報(日付・注文構成・注文贈答関係・用途・注文方法等)を極力解明した。そしてその成果に基づき、交流関係・小袖贈答の慣習・遺品・染織品資料を検討し、東福門院において小袖とはどのような存在であったのか考察を加えた。 以下、知見は「交付申請書」の研究の目的に対応させた。 (目的1)『衣裳図案帳』は、東福門院・女三宮・女中衆など「女院御所」の注文と立証した。内容について、季節贈答・孫娘の結婚祝儀・宮中での躍り衣裳を特定した。デザインの決定について、注文主がいわゆる雛形本・スタイル本から選び、文様の色・大きさ・配置・加飾技法などを指示する方法も見いだした。(美術史学会西支部例会発表、11月15日、関西大学附属図書館) (目的2・3)『尾形宗謙呉服誂物帳』は、東福門院の女中衆の私的な注文と特定した。内容には、他国の武家・社家へ嫁いだ姉妹の家族宛で、幼児服・袴・小紋・更紗染等がある。雁金屋のもう一つの顧客像が見出せた。(日本風俗史学会関西支部発表、10月4日、京都女子大学) (目的3・4)孫娘の祝儀・記録・遺品例から東福門院は、小袖に縁を意識しており、武家慣習が認められる。又躍り衣裳のように趣味性を披露する対象ともみている。東福門院は小袖以外の細工物や、風流なもてなしで人々に「数寄」を示しており、いわば一文化を作り上げていた。 以上、本研究は、雁金屋関連資料を東福門院周辺の小袖の注文実態と、文化様相を示す貴重な資料として新たに位置付けた。
|
Research Products
(1 results)