2002 Fiscal Year Annual Research Report
〈真正性〉と文化遺産のあり方:中国雲南省麗江納西族自治県「麗江旧市街」の事例から
Project/Area Number |
02J02508
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
本間 美歩 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 文化社会学 / 世界遺産条約 / <生活密着型>文化遺産 / 真正性 / 中華人民共和国 / 「麗江旧市街」 |
Research Abstract |
本研究の目的は、<生活密着型>文化遺産に焦点をあてた文献/現地調査を行い、最終的には文化遺産のあり方の新たな可能性を提示することにある。<生活密着型>文化遺産の中でも、とくにユネスコの世界文化遺産に登録されているものに注目し、ユネスコ、文化遺産保有国、観光客、文化遺産の利用者(居住者等)それぞれが文化遺産に求める<真正性>の違いを明らかにすることによって、世界遺産条約が登録条件として課す「オーセンティシティのテスト(the test of authenticity)」による<真正性>が必ずしも共有されるものではなく、また必ずしも文化遺産の保護に有効ではないことの検証を試みるものである。 今年度の研究計画は、1.文化遺産の成立過程、2.文化遺産の捉えられ方の歴史、3.中国における文化遺産概念、4.中国雲南省麗江納西族自治県の世界文化遺産「麗江旧市街」にて調査を行い、納西族および「麗江旧市街」の成立と変遷について明らかにすることであった。このうち1と2については、ある程度の見解を論文として発表する機会を得たが、更に時間概念や空間概念等との関連においても追究していくことが望ましい。3、4については現在も引き続き調査中であり、いずれはまとまった形で発表する予定である。 その他「麗江旧市街」における各主体の求める<真正性>について、学会発表および論文の形で発表する機会を得た。しかし、現代中国の少数民族政策が国家を統一するための重要課題ともなっているということを更に深く考慮した上で研究を続ける必要性が指摘された。「麗江旧市街」で実施されている観光政策において、国家的な思惑と地域独自の考え方がどのようにせめぎ合っているのか考察するためには、中国政府が主導する観光政策や、他民族居住地域の文化遺産のあり方についても調査を行い、どのようなイメージを旅行者に与えようと意図しているのか分析する必要がある。そのため、平成16年度の研究計画を前倒しし、「麗江旧市街」以外の文化遺産、具体的には山西省の「平遙旧市街」および安徽省の「安徽古民家群」(いずれも世界文化遺産である)における現地調査を実施した。
|
Research Products
(2 results)