2004 Fiscal Year Annual Research Report
グリオーマ細胞及び神経細胞での膜脂質シグナリング制御遺伝子による分子治療の開発
Project/Area Number |
02J02513
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
澤田 元史 岐阜大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | p53 / セラミド / 活性酸素種 / グリオーマ / カスパーゼ / スフィンゴミエリナーゼ / ミトコンドリア / アポトーシス |
Research Abstract |
これまで申請者は悪性グリオーマ細胞を用いたセラミド産生経路に、1)活性酸素種(ROS : reactive oxygen species)の産生を介する野生型p53依存性の中性スフィンゴミエリナーゼ(N-SMase)の活性経路 2)p53非依存性のROSを介さない酸性スフィンゴミエリナーゼ(A-SMase : acid sphingomyelinase)の活性経路の2種類が単独あるいは混在することを報告してきた(Cell Death Differ. 11(9),997-1008,2004)。そこで、今回我々はp53表現型の違いによるグリオーマ細胞の放射線によるアポトーシス感受性及びセラミド産生の相違を解明するために、野生型p53を発現しているヒトグリオーマU-87MG細胞にp53のsiRNA(small interfering RNA)をレトロウィルスを用いて遺伝子導入することによってp53を不活化させたU-87MG細胞を作成した。この細胞を用いてp53 statusの異なるU-87MG細胞系(p53活性の有無)での放射線によるアポトーシス、ROS産生、N-SMaseあるいはA-SMase活性及びセラミド産生について検討した。結果としては、放射線治療によるヒトグリオーマ細胞のアポトーシス誘導過程においては、p53依存的なN-SMaseではなくp53非依存的なA-SMase活性を介するセラミド産生経路が存在するとともに、p53がA-SMase活性の阻害とacid ceramidaseの発現を制御することによりセラミド産生を制御していることが判明し報告した(Cell Death Differ. 11(8),853-861,2004)。またセラミド代謝系を阻害する薬剤投与下で放射線治療によるセラミドを過剰に蓄積させることで放射線単独治療群との間でアポトーシス、caspase活性、A-SMase活性及びセラミド産生について検討した結果から、p53非依存的な放射線によるアポトーシス誘導過程においてA-SMase活性を介するセラミドがcaspaseの活性に重要な役割を果たしていることも判明し報告した(Oncol Rep. 12(1),119-123,2004)。これらにより、放射線治療によるヒトグリオーマ細胞のアポトーシス誘導におけるp53非依存的なセラミド産生機序が明白となり、放射線によるアポトーシス誘導過程でのセラミド産生機序の解明にも繋がった。
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