2002 Fiscal Year Annual Research Report
金属を含むラジカルの高分解分光〜水酸化物の構造と反応ダイナミクス
Project/Area Number |
02J02853
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
平尾 強司 茨城大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高分解能分光 / 金属化合物 / フーリエ変換分光法 / マイクロ波分光法 / 配位子場理論 / 国際情報交換(カナダ) |
Research Abstract |
高温電気炉中で蒸気化した金属の放電プラズマ内での反応中間体を、カナダ・ウォータールー大学のP.F.Bernath研究室の所有するFourier変換分光器と、茨城大学・天埜研究室が所有する周波数変調型サブミリ波分光器で検出し主に分子構造に関する知見を得た。 電気炉は市販のものを使用した。電気炉の全長は50cm、直径は6cm程度であり、中心部の最高温度は1,500℃に達する。ここに吸収セルを挿入し、セルの中心に試料となる金属粉(あるいは金属塩)を置き、セルを直接加熱した。吸収セルにはアルミナ製の円筒チューブ(長さ1m、直径5cm)を使用し、その両端にステンレス製のフランジと放電用電極をつけ、セル内を真空ポンプで排気した。 ウォータールー大学では、電気炉放電による発光をCaF_2レンズによりFourier変換分光器のアパチャーに集光し、赤外から可視領域における電子遷移を測定した。遷移金属分子では、isovalentな分子間でエネルギー準位の相関が配位子場理論から予想され、スカンジウムから鉄までの金属と銅については比較的に当てはまっているが、近年ニッケルの化合物(NiH〜NiF/NiCl)については、実験と理論の両方から、この予想が例外的に当てはまらないことがわかった。そこで、周期律表で隣にあり、研究例の乏しいコバルトの分子について研究した。CoCl_3を蒸気化し、アルゴン緩衝ガス中で放電してCoClの発光スペクトルを450nmと1μm領域について測定した。解析によって得られた各準位のスピン・軌道相互作用から、配位子場理論から期待されるエネルギー準位の相関(CoH〜CoCl)を確認した。現在1μm領域のスペクトルの帰属を進めている。茨城大の分光器の光源はBWO(逆進行波管)で、検出器は液体ヘリウム冷却のInSb検出器である。現在は、マグネシウムを含む化合物(MgO等)の振動励起状態の検出を試みている。
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