2003 Fiscal Year Annual Research Report
金属を含むラジカルの高分解分光〜水酸化物の構造と反応ダイナミックス
Project/Area Number |
02J02853
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
平尾 強司 茨城大学, 理学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | サブミリ波分光 / 逆進行波管(BWO) / マグネシウム / 亜鉛 / 水酸化物 |
Research Abstract |
実験室における、放電プラズマ中で重水素化合物を生成する際に生成する反応中間体で、星間空間中の重水素濃縮の鍵になる分子でもある、D_2H^+のサブミリ波スペクトル(J=1_<10>-1_<01>,691.660GHz)をはじめて観測した。測定には茨城大・天埜研究室のサブミリ波分光器を使用した。分子は外部磁場(200G)をかけた自由空間セルに、水素、重水素、アルゴンの混合ガスを導入し、拡張負グロー放電して得た。結果はアメリカの天文学の専門誌ApJに投稿、掲載された。このデータは、星間空間でのD_2H^+の探索に使用される。 平成15年11月から16年1月までカナダ・オンクリオ州ウォータールー大学(P.バナース研究室)に滞在し、金属化合物のフーリエ変換分光を行った。その際、MgOHの回転構造まで分離したA^2Π-X^2Σ^+電子遷移の発光スペクトルを検出した。この分子は、Mgの蒸気、水とArの混合ガス中で直流グロー放電して得た。この生成条件下では、他にMgH A^2Π-X^2Σ^+電子遷移(Δv=0)が検出されたのみである。また、アルカリ土類金属と化学的性質が類似する3d遷移金属、Znの水酸化物の検出をMgの場合と同様の手法で試みたが、検出されなかった。しかし、ZnHのA^2Π-X^2Σ^+、B^2Σ^+-X^2Σ^+電子遷移が従来観測されていた以上の強度で検出された。Znは、Mgと異なり3d軌道に電子が充填しているため、それによる影響が酸素との反応性に現れていると考えられる。 現在、茨城大で分子ビーム法を用いたサブミリ波分光器の製作に取り組んでいる。サブミリ波光源には逆進行波管(BWO)を使用し、この出力を周波数変調して分子を検出する。この分光器は分子ビームを使用するために分子の回転温度が下げられるので(10K程度)、ファンデルワールス錯体などの生成が可能になることと、吸収線の線幅が抑えられ、周波数分解能が向上する利点がある。また、レーザーアブレーション法により金属化合物の検出も可能となる。現在は、スペクトルの積算速度の向上やポンプの排気速度を上げるなど、改良を重ねている段階である。
|
Research Products
(1 results)