2002 Fiscal Year Annual Research Report
逆行性神経伝達を担う脳内カンナビノイド系の作用機構とその生理的意義
Project/Area Number |
02J02937
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前島 隆司 金沢大学, 大学院・医学系研究科, PD
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Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / 登上線維 / 逆行性シグナル伝達 / 内因性カンナビノイド / 代謝型グルタミン酸受容体 / カンナビノイド受容体 / ホスホリパーゼCβ |
Research Abstract |
脳内には、マリファナの標的となるカンナビノイド受容体とこの受容体を活性化する内因性のリガンド(内因性カンナビノイド)が存在する。近年の研究により、この内因性カンナビノイドは、通常の神経伝達物質とは異なり、シナプス後細胞からシナプス前終末へ至るシグナル伝達を担う逆行性介在物質として働くことが明らかにされた。小脳皮質では、シナプス後細胞にあたるプルキンエ細胞において、細胞内のカルシウム濃度が上昇するか代謝型グルタミン酸受容体1型が活性化すると、内因性カンナビノイドが細胞外に放出され、入力線維のシナプス終末に存在するカンナビノイド受容体を介して神経伝達物質の放出が抑制される。本年度は、シナプス後細胞における内因性カンナビノイドの合成過程の解明を目的とし実験を行った。小脳プルキンエ細胞では、代謝型グルタミン酸受容体1型は3量体GタンパクGq/11を介して、主にホスホリパーゼCβ4(PLCβ4)を活性化し、様々な生理作用を引き起こすことが知られている。そこで、PLCβ4の遺伝子欠損マウスを解析し、内因性カンナビノイドの合成過程にこのシグナル伝達経路が関与するか検討した。生後9から13日齢のマウスより摘出した小脳の薄切片をもちい、電気生理学的手法を用い実験を行った。微分干渉顕微鏡下で同定したプルキンエ細胞よりホールセル記録を行い、顆粒細胞層刺激で誘発される登上線維シナプスの興奮性シナプス後電流(CF-EPSC)を計測した。正常マウスでは、グループI型代謝型グルタミン酸受容体に選択的なアゴニストDHPGを投与すると、CF-EPSCの振幅が可逆的に減少した。しかしながら、PLCβ4欠損マウスではDHPGの効果が弱く、特に小脳虫部の前側部分では全く効果を示さない細胞が多く見られた。以上から、内因性カンナビノイドの合成過程にPLCβ4が関与することが推測された。
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