2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヴェトナム窯業村の陶磁器の変遷と社会変容-考古学的民族学的方法論による研究-
Project/Area Number |
02J02977
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西村 範子 (西野 範子) 金沢大学, 社会環境科学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | ヴェトナム(ベトナム) / バイハムゾン・キムラン遺跡 / フーラン窯業村 / 手工業村 / 陶磁器の編年 / 生業の変遷 / 紅河 / 提外地 |
Research Abstract |
本年度は、ヴェトナム、ハノイ郊外の紅河本流提外地に位置するバイハムゾン・キムラン遺跡の発掘調査を行った。9世紀から17世紀の陶磁器の編年案を作成し、発掘区域における生業の変遷を明らかにした。調査の結果、バイハムゾン、キムラン遺跡では、13,14世紀に当地周辺で活発な陶器生産が行われ、15世紀の遺物がほとんど出土しないことから何らかのイベントにより当域において居住が不可能であったと考えられる。16世紀には、発掘区域で開元通寶を中心とした銅銭が多量に出土した。銭の厚さが非常に薄く、湾曲した銭も見られるため、偽銭であろうと考えている。銅銭がごれだけ散乱して出土する例は今までになく、その銅銭が偽銭である可能性が高いこと、偽銭使用禁止令が何度も出ていること、その横に炉があることを考慮すれば、炉は、偽銭として没収された銭を廃銅として鋳造し直す作業に関連した遺構ではないかと考えられる。18世紀に再び居住の痕跡がなくなる。18世紀以降、水位上昇により、現在のキムラン村が位置する高みに移動した可能性が高い。古老への聞き取り調査から、20世紀初頭までは絹織物を生産していたという。1980年代から現代までは、窯業を生業としている。以上のように、キムラン村では紅河を通じてハノイに近いという立地を利用して、首都の需要に併せて、次々と手工業を変えていったことがわかる。 調査地フーラン窯業村では、10世紀から現代まで陶器生産を継続しているのに対し、キムラン村は、時世や需要に応じて、様々な手工業に生業を変化させながら生活していったことが明らかになった。今回の発掘調査及び研究は、手工業村史研究の一軸となり、フーラン窯業村の陶磁器と社会的な変遷の考察にあたって非常に良質な比較資料となる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 西野範子: "Gom su phu Lang(フーラン村の陶磁器について)ヴェトナム語"考古学の新発見(ヴェトナム語). 2002年. 423-426 (2003)
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[Publications] 西野範子: "Nhanxet ve hanh cung **ng Phong th**c thoily o huy*n Vu Ban Tinh Nam Ainh(ナムディン省ウーハン県における李朝のウンフォン行官の分析)(ヴェトナム語)"考古学の新発見(ヴェトナム語). 2002年. 595-596 (2003)
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[Publications] 西村昌也: "Nhan set nien tai ss** tuja gom su s**h trung ranh 1 d* ch* Kim Lan, Th**h Pho Ha Noi(ハノイ市キムラン遺跡出土陶磁器の年代の分析)ヴェトナム語"考古学の新発見(ヴェトナム語). 2002年. 404-409 (2003)
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[Publications] 西村昌也: "考古学とヴェトナム陶磁史"岩波講座 東南アジア史. 別巻. 46-50 (2003)
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[Publications] 西村昌也: "Chronological Sequence for Late 14th to Earty 15th Century Vietnamese Ceramics from Bai Ham Rong, Kim Lan and Ho Citaded (In English)"東南アジア考古学. 23号. 145-163 (2003)
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[Publications] 西村昌也, 西野範子: "ヴェトナム紅河平原遺跡データ集"文部科学者科学研究費報告書. 309 (2003)