2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J02991
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
新村 佳子 (内山 佳子) 国立遺伝学研究所, 生命情報・DDBJ研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 膜 / リン脂質 / 動的挙動 / DNA |
Research Abstract |
細胞膜は内部の小器官を保護し、必要不可欠な物質が選択的に膜を通じて移動し、生命維持をする大変重要な場である。細胞膜における分子の動的挙動解析は、膜の役割を理解する上で大変重要であるが、膜における分子を直接経時変化で計測する装置がない。そこで本研究の目的である、膜における分子の動的挙動を経時変化で計測する装置として、これまで我々が独自に開発し、液液界面の分子挙動で興味深い知見を得てきた準弾性レーザー散乱(QELS)法の生体膜への応用に期待している。本年度の研究では、QELS法が実際に生きた細胞に入るDNA複合体の動的挙動を擬似的な生体膜において追跡可能か確認することを目的とする。また、生体膜の内側と外側の組成比の違いが外来物質に与える影響を調べるため、内側と外側の主要脂質の単分子膜モデルにおけるDNA複合体の動的挙動を調べることも目的とする。 QELS法により液液界面に自然発生する界面張力波の周波数をin-situ計測し、界面張力を評価した。光源にはYAGレーザーを使用し、波長66μmの界面張力波の周波数を測定した。液液界面に生体膜の内側と外側を構成する主要脂質の単分子膜モデルをつくり、そこへDNA、DNA-リポソーム複合体を注入し経時変化で各々の分子挙動を追跡した。 細胞に入りやすいDNA-リポソーム複合体の内側と外側の膜における吸着速度と吸着度がともに大きく違いが見られなかったが、細胞に入りにくいDNAでは違いが見られた。外側の膜におけるDNAの吸着速度と吸着度がともに内側よりも4倍小さかった。これは、外からDNAが入りにくくさせていることに関係すると今のところ考えている。QELS法により生きた細胞に取り込まれるDNA-リポソーム複合体の内側、外側モデル単分子膜における動的挙動を追跡できた。QELS法は生体膜への応用に期待がもたれる。
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