2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本における<三国志>言説の享受の様相に関する通史的把握
Project/Area Number |
02J03238
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田中 尚子 早稲田大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 和漢比較 / 三国志 / 日本文学 / 軍記物語 / 注釈 |
Research Abstract |
既発表論文(「清原宣賢と<三国志>-「蒙求聴塵』を中心として-」中世文学46 2001/06)の続稿として、「清原宣賢の式目注釈-『清原宣賢式目抄』を中心として-」(国語国文71-6 2002/06)を発表。清原宣賢の注釈の特徴を相対化することを試み、そこから改めて宣賢の<三国志>観を捉え直した。 また、室町期以降の<三国志>享受の展開の様相を検討するべく、「近世前期における<三国志>享受の一齣-『国史館日録』を中心として-」(平成14年度説話文学会大会口頭発表 於奈良女子大学2002/06)において、『国史館日録』内の『三国志』加点記事を検討し、歴史学的興味に基づいて<三国志>が享受されており、その中で、南北朝時代と三国時代の類似性が意識されていく動きが現れることを述べた。続いて、「『通俗三国志』試論-<三国志>と『太平記』の相互的影響関係-」(軍記・語り物研究会第347回例会口頭発表 於法政大学2002/09)において、『通俗三国志』の翻訳に『太平記』など軍記の影響が見えることを指摘し、そういった現象の背景に、南北朝・三国時代を類似したものと考える近世当時の意識が存在するではないかとの推測も呈した。 上記の享受研究に併せて、「『太平記』と『三国志演義』における<歴史>叙述の方法」(日中比較文学(文化)検討会口頭発表 於中国北京師範大学2002/09)や、「『太平記』と『三国志演義』における死の叙述法-人物描写とのかかわりから-」(比較文学45 2003/03予定)などの対比研究を行って、両者の類似性を見出し、そこからも、『通俗三国志』翻訳に軍記が利用されるに至った経緯を探った。享受研究・対比研究を同時に行うことによって、より重層的に<三国志>享受の様相を明らかにすることが可能となったと思われる。
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