2003 Fiscal Year Annual Research Report
母子間の「抱き」の発達行動学的研究:ダイナミックシステムズアプローチの適用
Project/Area Number |
02J03302
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西條 剛央 早稲田大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ダイナミックシステムズアプローチ / 母子 / 抱き / 質的アプローチ / 人間科学的アプローチ / 発達研究法 |
Research Abstract |
本研究は「抱き」の成立・維持といった求心的側面と同時に遠心的側面である「離抱(りほう)」現象をも扱うものである。第一に,離抱現象にダイナミック・システムズ・アプローチを適用するにあたり,おおまかな発達傾向を掴むための横断研究を行った。その研究では,母親が自分の子どもを次第に抱かなくなって行く離抱現象の概観を明らかにすることを目的とした。1-13ヵ月の乳幼児を持つ母親298名を対象とした質問紙調査を行ない,抱き時間や乳幼児の発達に関する情報を集めた。その結果,未首すわり段階に6時間以上あった抱き時間は,歩行段階には2.5時間へと減少していくことが明らかとなった。さらに,乳児の発達的側面から,離抱に影響を与える要因を検討した。その結果,(1)姿勢運動発達,(2)身長,(3)体重,(4)授乳形態,(5)子の体を動かす行動,(6)子の抱っこから降りたがる行動が影響を与えていることが示された。 次に,それを踏まえて本研究課題の中心を為すダイナミックシステムズアプローチを,離抱現象へ適用した。生後1ヵ月〜3ヵ月の子どもを持つ母親21組を対象として,最長40ヵ月まで1ヵ月おきに離抱の縦断的調査が行われた。DSAに基づき,個々の母子における離抱過程が記述されるとともに,授乳抱き,通常抱き,おんぶ抱きの3側面に焦点化され,離抱に影響するコントロールパラメータが検討された。その結果,平均値からは,全抱き時間は初期に山型を描くものの全般的には乳児の月齢と共に右肩下がりに減っていくことが示された。また個々の発達軌跡に基づいて検討した結果,離抱過程は多様であり,かつ非線形の様相を呈し減少することが示された。乳児の発達的側面から離抱に影響を与える要因を検討した結果,主に(1)姿勢運動発達,(2)体重が影響を与えていることが示された。これはダイナミックシステムズアプローチを,母子の関係性発達に適用した日本先駆的な試みであり,「離抱(りほう)」現象への適用としては世界でも初の試みである。 また横断研究と縦断研究(ダイナミックシステムズアプローチ)の並列的使用を理論的に担保するための人間科学的研究法に関する認識論を整備した。 前年度の成果とこれらの研究をまとめて『母子間の抱きの人間科学的研究:ダイナミツク・システムズ・アプローチの適用』として出版した。またこれら一連の研究を各種研究会で発表した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 西條剛央: "人間科学の再構築III:人間科学的コラボレーションの方法と人間科学の哲学"ヒューマンサイエンスリサーチ. 12. 133-145 (2003)
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[Publications] 西條剛央: "リアリティに対するバーチャルリアリティの限界と意義:乳幼児行動発達研究の視点から"赤ちゃん研究. 2. 17-18 (2003)
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[Publications] 西條剛央: "意見欄を盛り上げるための一提言"発達心理学研究. 14. 318-320 (2003)
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[Publications] 西條剛央: "母子間の"離抱"に関する横断的研究:母子関係を捉える新概念の提唱とその探索的検討"発達心理学研究. 15(未定). (2004)
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[Publications] 西條剛央: "迅速・確実・建設的な査読システムの構築へ向けた提案:相互作用の活発なジャーナルへの再生"発達心理学研究. 15(未定). (2004)
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[Publications] 西條剛央, 清水武, 荘島宏二郎: "新版 心理学がわかる(在中の「心理学領域地図」)"朝日新聞社. 3 (2003)
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[Publications] 西條剛央: "母子間の抱きの人間科学的研究-ダイナミックシステムズアプローチの適用"出版社:北大路書房. 150 (2004)