2002 Fiscal Year Annual Research Report
社会不安に対する役割固定法の治療的効果の研究および治療的要素の分解研究
Project/Area Number |
02J03304
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長江 信和 早稲田大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会不安 / シャイネス / 認知行動療法 / パーソナル・コンストラクト療法 / 大学生 / 効果研究 / 心理療法 |
Research Abstract |
1)大学生におけるシャイネスの存在率とその影響(調査研究) 大学生3152名に対して,シャイネス(社会不安)の存在率の調査を行った。その結果,現在の存在率は68%であった。ただし,83%は人づきあいを何とかこなしており,専門家への相談を考えた経験のある者は24%に過ぎなかった。シヤイネスは基本的に正常な人格特性であることが示されたが,援助を要する一部の学生に対しては,専門家による積極的かつ非侵襲的な援助が必要と考えられた。 2)自己概念に及ぼす自己描写法の効果の検証(自己描写法の実験研究) (a)自己描写を共感的な友人の立場から行えば,自分の立場から行う場合よりも,肯定的な自己評価が生じる,(b)共感的な他者の観点から行う自己描写は,シヤイネスに悩む学生の気分状態を改善させる,という仮説を検証した。シャイネス傾向の高い大学生68名を無作為に3群に振り分けた(共感的な他者の観点で自己描写を行う群,自己の観点から自己描写を行う群,新聞の感想を描写する統制群)。尺度には自己意識尺度,気分尺度,計量言語的指標等を用いた。結果として,仮説はいずれも棄却された。自己物語の構造に量的な変化は導かれたが,自己評価や気分状態には即時的な効果は生じなかった。 3)上演法による遂行行動の変化と持ち越し効果の検証(上演法の実験研究) (a)実験者が提示するシナリオに応じて遂行行動が変化する,そして,(b)シナリオの役割通りに自己概念が変化する,という仮説を検証した。被験者はシャイネス傾向の高い大学生18名。被験者には,実験室でのサクラとの会話(2回),普段通りの振る舞いとシナリオ通りの理想的振る舞い(演技)を求めた。結果として、仮説はいずれも実証された。普段の自分通りに振る舞う場合と理想の自己を演じる場合では,外顕的な遂行行動に有意な差が生じ,演技後の自己概念が呈示内容に一致する効果も実証された。
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