Research Abstract |
1.高齢者の運動習慣形成・維持を促す強化システムの検討. 首都圏に居住する高齢者9名(66〜79歳)を対象に,単一事例実験計画(多層ベースライン法)により介入プログラムを実施した.各被験者は,異なったベースライン期間(2・4・5週間)で日常の身体活動状況(活動時間,総消費量,運動量,歩数,運動強度等)の測定を行なった後,個別に強化プログラムの介入を開始した.介入期は,以下の4つのステージにより構成され,段階的に強化システムが機能するよう配慮された. ステージ1 先行要因となりうる適切な情報の提示+身体活動状況の結果のフィードバック ステージ2 結果のフィードバック+活動記録日誌によるセルフモニタリング ステージ3 ステージ2+目標設定および目標達成度の評価 ステージ4 ステージ2+ステージ3+ライフサイクル利用計画(プリマックスの原理) 約3ヶ月間の介入実験の結果,ほぼすべての被験者において,介入後には活動時間,総消費量,運動量,歩数,運動強度の増加が認められた.特に,運動強度(中程度以上)の増加が顕著であり,身体活動の質的変容が促進されたことが示唆された.また,ストレス反応に関しても,多くの被験者において介入後の減少傾向が認められ,メンタルヘルスへの肯定的な影響が示唆された.さらに,快感情の自覚や身体的・心理的状態の改善,行動範囲の拡大,生活習慣全体への好影響などが報告され,これらの要因がその後の行動に対するさらなる強化子として機能することが考えられる.半年後,1年後のフォローアップ測定により,介入プログラムの長期的な有効性を確認する予定である. 2.「高齢者用運動アドヒレンス・プログラム」の提案 これまでの研究結果により,効果的な「高齢者用運動アドヒレンス・プログラム」の実施のために必要な要素として,(1)強化は段階的に行なうこと,(2)個人の活動水準,ライフスタイルに適合した計画であること,(3)[運動」にこだわらず,まずは身体活動の増加をめざすこと,が挙げられる.高齢者の運動習慣形成・維持においては,特に,集団で実施される運動プログラムへの参加に消極的な者に対しても有効なプログラムであることが重要であり,本研究において検討された「高齢者用運動アドヒレンス・プログラム」の応用が可能であると考えられる.
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