2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国古代刑法研究―中国古代刑法の刑法総論的研究とその民衆支配的性格の検討―
Project/Area Number |
02J03342
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
水間 大輔 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 東洋法制史 / 中国古代史 / 戦国秦漢史 / 秦律 / 漢律 / 睡虎地秦簡 / 張家山漢簡 / 二年律令 |
Research Abstract |
本年度は、まず中国古代の前漢初期の律令を内容とする、「二年律令」と呼ばれる史料を詳細に分析することから始めた。そして、その分析を踏まえたうえで、秦律・漢律において、(1)犯罪の未遂・予備・陰謀、及び(2)故意・過失がいかなる扱いを受けていたのか、その全体としての傾向を、特に後世の唐律との比較を通して検討した。 (1)については、秦律・漢律において、各犯罪が既遂に至らず、未遂・予備・陰謀の段階で終了した場合、それぞれいかなる刑罰に処するものと定められているのかを分析した。分析の結果、秦律・漢律では一般に唐律よりも、未遂・予備・陰謀に対して重い刑罰を科しており、しかも犯行の発展段階の早期から処罰の対象としている規定が多いことを明らかにした。そして、このような秦律・漢律の未遂・予備・陰謀に対する処罰は、たとえ犯人が意図した通りの結果が成就しなくても、犯行の発展段階の早期から重い刑罰に処すると威嚇することによって、犯罪の発生自体を防止することに立法趣旨があり、またこのような国家の政策的意図が、秦律・漢律には唐律よりも色濃く反映されていたと結論づけた。 (2)については、主に殺人罪を中心に検討した。すなわち、後世の唐律では、殺人罪をその態様に応じて、謀殺・闘殺・故殺・過失殺・戯殺・誤殺といった類型に分類し、それぞれ異なる刑罰を科していたが、漢律にも唐律と似たような類型が確認された。そして、このように漢律では、単純に故意と過失にわけて罪を論じるのではなく、犯人の意思、及び被害者のとった行動に応じて、細かく分類されていたことが明らかになった。 なお、以上の研究成果は、三回にわたり学会で報告したが、そのうちの一つは論文として発表した。残りの二つについては、現在執筆中であり、今年の三月中に学術雑誌へ投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)