Research Abstract |
シロイヌナズナ花茎の重力感知の場は内皮細胞層であり,重力の向きに沈降する色素体(アミロプラスト)が平衡石として機能すると予想されている.平成14年〜15年度までに私は,生きた花茎内皮細胞を横立顕微鏡で観察し,重力刺激前後の細胞内の挙動を捉える系を確立した.同一細胞内でのアミロプラストと液胞膜の連続的観察から,重力刺激後アミロプラストは液胞膜に包まれた状態で原形質糸の中を移動することを明らかにした.個々のアミロプラストの挙動を詳細に解析して,重力刺激を与えて0-3分の時間帯に,新しい底面に向かう動き成分が有意に増えることを統計的に示した.アミロプラストは細胞の底面付近で絶えず跳躍的な運動をしており,この運動はアクチン繊維依存的であることを明らかにした.アクチン繊維破壊後も茎切片の重力屈性能は残るので,野生型,野生型のアクチン破壊処理後,重力屈性変異体(zig/sgr4)の3つの花茎でのアミロプラストの挙動を比較した.その結果,1)全体的な重力方向への移動,2)低頻度に現れる絶対値の大きい重力方向への移動,3)液胞膜による包み込み,が重力感受能と強く相関している,考察した.以上の結果を投稿論文としてまとめ,Plant Cell誌に受理された. 他のsgr変異体(sgr5,sgr6)と,zig/sgr4のサプレッサー変異体zip1に関して,内皮細胞の電子顕微鏡観察を行った.sgr5,sgr6に関しては,野生型同様アミロプラストが液胞膜に包まれた状態になっていた.sgr5についてはアミロプラストの沈降が野生型と同程度とは言えず,更に詳細な検討が必要ではあるが,これらの結果は,内皮細胞でのアミロプラストの動きやすさと,液胞膜による包み込みに相関があることを支持する.
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