2002 Fiscal Year Annual Research Report
Rho-Rho-キナーゼは大脳皮質形成過程の細胞機能を制御するか
Project/Area Number |
02J03435
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
金児 貴子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Rho / Rho-キナーゼ / 大脳皮質 |
Research Abstract |
多層構造を持つ大脳皮質形成過程では、脳室周辺領域で細胞分裂を終えた神経細胞は放射性グリアの放射状繊維を足場にして順次軟膜方向へ移動する。この過程は脳発生過程の一つのモデル系として良く研究されているが、その分子メカニズムについては、ほんど明らかにされていない。私共はエレクトロポレーション法を脳組織スライス培養と組み合わせることにより、in vivoにおける環境を維持し、経時的変化の観察、遺伝子を時間的空間的に特異的に発現させることを可能にした。一方、私共の研究室では低分子量GTP結合蛋白質RhoのエフェクターとしてRho-キナーゼ及びミオシンフォスファターゼのミオシン結合サブユニット(MBS)を同定している。さらにRhoの下流でRho-キナーゼとMBSが協調してミオシン軽鎖、ERMファミリー蛋白質などのリン酸化レベルを制御し、アクトミオシン系の再構築を引き起こすことも見出している。しかしながら、Rho-Rho-キナーゼが個体レベルの発生や組織形成において果たす役割については不明な点が多い。本研究では上述の手法を用い、大脳皮質形成過程におけるRho-キナーゼ及びその基質の作用機構を明らかにすることを目的とした。 本年度、私共は大脳発生期のラット胎仔脳にRho-キナーゼ及びその基質遺伝子をエレクトロポレーション法により導入した後、組織スライス培養を行い、これらの分子が細胞の移動や分化・形態形成に及ぼす影響の解析を行った。その結果Rho-キナーゼの野生型、活性型、不活性型を発現させた神経細胞ではいずれも移動が阻害された。また、Rho-キナーゼの不活性型を発現させた細胞は通常の移動細胞が二極性の二本の突起を持つのに対し複数本の突起を持つ形態を示した。以上の結果からRho-キナーゼが神経細胞の移動や形態形成を制御する可能性が示唆された。従って本年度の研究計画はほぼ達成できたと考えている。
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Research Products
(1 results)