2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J03487
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
内藤 まゆみ お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 抑うつ / 合理的思考 / 因果関係 / 情報処理様式 / 認知の歪み / 推論の誤り / ネガティブライフイベント |
Research Abstract |
研究の目的 不合理な思考は抑うつを生起させる要因と考えられてきた(Beck,1976など)。しかし、思考が合理的かどうかは抑うつ生起に影響しないとの可能性も示唆されている(Alloy &Abramson,1979など)。本研究では、,思考の合理性と抑うつの間に存在する媒介要因(嫌な出来事に関する「推論の誤り」および「歪んだ認知」)の因果関係(Beck,1976)を検討し、抑うつにおける思考の合理性の影響を明らかにする。 手続き 大学生507名を対象に2ヶ月間隔で2回にわたる調査を実施した。1・2回目の調査で思考の合理性と抑うつを測定し、2回目の調査では嫌な出来事と推論の誤りを尺度で、歪んだ認知を自由記述で測定した。 結果と考察 16個の嫌な出来事の頻度の中央値によって出来事高/低群に分け、出来事群について以下の分析を行った。最初に、推論の誤りとその下位項目6つを従属変数とし、合理性を説明変数とする回帰分析を行った。その結果、合理性が低いほど情報を選択的に注目することが示された(pr=.18,p<0.5)。次に、自由記述の最初の2つについて、歪んだ認知があったかどうかを評定者2人がコード化した。歪んだ認知(あり/なし)×合理性(高/低)のx^2分析を行ったところ、合理性低群は、合理性高群より、自己卑下的な認知が多いことが示された(x^2(1,201)=2.99,P<.09)。出来事低群では、こういった合理性に関する効果はみられなかった。以上の結果から、不合理な思考は情報を選択的に注目させ、自己卑下的な認知を増加させることが示された。不合理な思考はこれらの要因を介して抑うつを生起させると考えられる。本研究は、これまで未解決であった抑うつにおける合理性論争を解決し、不合理な思考による抑うつ生起プロセスを提示した点で意義深いといえる。
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