2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J03487
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
内藤 まゆみ お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 抑うつ / 合理的思考 / 治療技法 / 情報選択 / ネガティブな認知 / PAC分析 / 社会的実験 |
Research Abstract |
研究の目的 合理的思考の促進は抑うつの治療法として考えられてきたが、その効果に関する実証研究は十分とはいえない。そこで、本研究では個人内分析と社会的実験を行い、合理的思考によって(1)ネガティブな情報選択、(2)ネガティブな認知(3)抑うつが軽減されるかどうか検討する。 個人内分析 方法:女子短大生を被爆者としPAC分析を行った。事前調査により高合理的思考者と低合理的思拷者を抽出し、嫌な出来事についてどのようなことを考えたか個別にインタビューを行った。結果と考察:クラスター分析の結果、低合理的思考者からは嫌な出来事に関する「ネガティブな認知(人生には良いことより嫌なことの方が多い)」を示すクラスターが抽出された。高合理的思考者ではネガティブな認知を表すクラスターは抽出されなかった。この結果は合理的思考が(2)ネガティブな認知を抑制することを示すといえる。 社会的実験 方法:女子短大生16名を処遇群と統制群に二分した。処遇群は合理的思考についてテキストを購読・発表し、議論を行った。学習は2週間にわたり計5時間40分行われた。統制群はこうした学習を行わなかった。学習期間前後に調査を実施し、(1)ネガティブな情報選択および(3)抑うつを測定した。結果と考察:群(処遇/統制)を独立変数とし、ネガティブな認知あるいは抑うつを従属変数とし、学習前調査の得点を共変量とする共分散分析を行った。全体の分析で群間差はみられなかった。次に、学習への意欲について高群と低群に分けて分析を行った。学習意欲高群でのみ(1)情報選択(F(1,4)=6.83,p<.06)と(3)抑うつ(F(1,4)=5.23,p<.09)において群間差の傾向がみられた。これらの結果から、合理的思考の学習は情報選択および抑うつの軽減に効果的あることが示唆された。しかし、その対象は意欲の高い者に限定された。意欲の低い者は学習内容を理解しなかった(できなかった)ため、効果が上がらなかったと推測される。今後は、学習者の関心を引きつける方法を開発する必要があろう。
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