2003 Fiscal Year Annual Research Report
徳川後期の学問と政治-林家・昌平黌儒者を中心として
Project/Area Number |
02J03573
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
眞壁 仁 東京都立大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 学問所 / 昌平黌 / 庄内藩 |
Research Abstract |
今年度は、寛政以降の林家と昌平坂学問所儒者たちについて実証的な検討を重ねるばかりでなく、日本国内に広がる林家・昌平黌と各藩校との関係の事例として庄内藩を取り上げ、徳川後期の日本社会における昌平坂学問所の政治的役割とその思想の具体相を明らかにしようとした。具体的な内容は次のとおり。(1)いわゆる寛政異学の禁において中心的な役割を果たしたと考えられる柴野栗山の書誌的調査と、それにもとづく「異学の禁」の再検討。(2)庄内藩学の資料調査と検討。18世紀半ばの徂徠学以後の問題、徳川中期から後期への学問移行を明らかにするために、また幕府の学問所儒学の地方への波及問題を検討するためにも、庄内藩学は重要な思想的位置を占めていると考えられる。幕府学問所の朱子学を「正學」とする旗本教育と、それに倣った地方の藩校での朱子学を基軸とする教育普及にも拘わらず、庄内藩では文化2年の藩校開校以来、一貫して徂徠学に基づく武家教育を導入したからである。先行研究では史料調査を含め未検討の問題が多く、関係史料を精査する必要があった。厖大な史料を解読し思想史研究に生かすにはなお基礎的調査を重ねる必要があるが、今年度は、酒田市立中央図書館、酒田市立光丘文庫、旧致道館、致道館博物館、鶴岡市立図書館(郷土資料室)などで、藩校致道館の関係資料および藩儒(水野華陰、田中桐江、犬塚五松園、加賀山桃李、三矢東嶺、白井東月、石川朝陽、白井西郭、菅南風館、坂尾観水、多田宏廬ら)の自筆史料を含む著作群を調査し、解読作業を行った。これらの調査の蓄積を基に、現在、研究論文を執筆中するとともに、学位論文「徳川後期の学問と政沿-昌平坂学問所古賀家三代を軸として」を大幅に改訂した上で公刊を予定している。
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