2002 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカの国民国家成立過程における民族集団の「生成」と「同化」
Project/Area Number |
02J03582
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
椎野 若菜 東京都立大学, 人文学部, 特別研究員PD
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Keywords | ルオ / スバ / コンパウンド / 居住形態の変遷 / 植民地時代 |
Research Abstract |
今年度は、従来から着手しているルオ研究を継続すると同時に、スバについては主に植民地行政官によって残された記述資料のなかにスバに関連するものがどのように言及されているか、文献調査に着手した。 年度の前半に開催された民族学会研究大会においては、これまでの研究成果を発展させ、「コンパウンド」をはじめ居住に関する人類学的用語の歴史的変遷についての発表を行なった。これは、ルオとスバという人びとがどのようにヴィクトリア湖沿岸北部から現在の東南部の居住地まで移動してきたのか、また彼らの居住形態が植民地時代をへてそれぞれどのように変化してきたのかを考察するうえでの、前座的研究である。現代ルオが自分のアイデンティティの拠り所として強調するコンパウンドは、植民地政府の政策によるクラン間戦争、野獣の減少、また植民地化以後の土地区画制度の実施といった外的要因によってその内容を変えてきた。三世代にわたる複婚の拡大家族を単位として暮らしていた時代から、一人の妻が個別にコンパウンドを形成を行なうようになってきていると同時に結婚の形態も変わってきているといえる。それぞれの民族がどのように「生成」され変化あるいは「同化」てきたかは、こうした居住形態の変遷をみることによっても描出できるのではないかと考えている。ルオ地域では引き続き調査を行なうと同時に、スバ地域においてもおって調査する予定である。 年度の中間期には、資料調査と代表的ルオ研究者デビッド・パーキン(オックスフォード大学)と研究連絡するためにイギリスに滞在し、そののち実地調査のためにケニアへ赴いた。ナイロビにおいては国立公文書館において植民地時代の調査地付近についてのアニュアル・レポート、民族間の抗争、結婚、葬送等の民族文化に関する植民地行政官による報告を限られた時間で調査した。短期であったため、また引き続き行なう予定である。 村落地域においては、調査者の関心のあった寡婦を引き継ぐというルオ特有の伝統的慣習について、とくにマーケット周辺の寡婦を中心に聞き取り調査を行なった。スバの居住地域と比較的近いため、両民族の地域をこえて行き来する人びとも観察された。近日中にその成果をまとめ、発表する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 椎野若菜: "マロマロ:ルオは上へ下へ!"月刊アフリカ. 42-9. 19-21 (2002)
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[Publications] 椎野若菜: "ピニ・ルモ 世界が終わる"月刊アフリカ. 42-10. 23-25 (2002)
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[Publications] 松園万亀雄編, 椎野若菜: "性の文脈"雄山閣. (2003)