2004 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカの国民国家成立過程における民族集団の「生成」と「同化」
Project/Area Number |
02J03582
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
椎野 若菜 東京都立大学, 人文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ケニア・ルオ / スバ / イギリスによる植民地化政策 / 民族の「生成」 / 民族の「同化」 / 植民地化過程 / 居住形態 |
Research Abstract |
本年度は本研究の最終年度であり、これまで申請者が中心的に行なってきたケニア・ルオの研究を基盤に、隣接するスバについて、さらにはほかの隣接民族集団などとの関係性にも視野を広げ、研究の成果の集大成を行なった一年であった。 したがって、既に収集した参与観察による民族誌的データ、ケニア共和国とその宗主国であったイギリスにおいて、大学やその付属図書館、公文書館で収集した文献データ等の整理をし、さらにそのデータ化、データの分類、そしてそれらの分析を行なった。同じく国内の大学、研究所付属の図書館、とくに国立民族学博物館所蔵の資史料の検索やデータ化とその分析も行なった。そうした作業により、イギリスによる植民地化過程で人びと(主にルオとスバ)がどのような政策的・文化的影響を受けたのか、それによって現在『ルオ」あるいは『スバ」とよばれる人びとの社会はどのように「生成」され「同化」し、民族社会が築かれて現在にいたるのか、その動態的一面が明らかになった。 とくに注目したのは、植民地化以前から、そして植民地化過程、ケニア共和国としての独立後から現在にいたるまでの人びとの居住形態の変化と居住集団の構成の変化である。移動性の高い、系譜にはさしてこだわらないゆるやかな居住集団を構成していた人びとが、イギリスによる定住化政策、統治が容易なピラミッド型社会組織をもつ「部族」の生成とその固定化などによって、急激にその社会組織を変化させた。すなわち、現在観察される強い父系の理念が働く社会であり、そのなかでは序列を重んじる慣習的規範やその違反にまつわる信念で律されるようになったのである。現地調査での聞き取りによると、ルオとスバはその移動の途中で共住することもあったが、植民地化政策の圧力も加わってスバはさらに南方や西南方に移動していった。現在の観察からも両者は文化的には酷似したところがみられるが、1920年代の植民地行政官による記録によると、当時すでに両者は「類似」していたという。つまり、植民地化以降、早い時期にスバはルオに吸収されつつあったと推察される。
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Research Products
(3 results)