Research Abstract |
平成14年度は,湿り等価温度の提案,衣服の日射吸収率及び建築壁面の日射反射率の実測,さらにPMVの熱負荷の概念を用いた新たな温熱指標を開発した.まず,湿度の影響を評価できない等価温度に露点温度を組み込み,湿度の影響を評価可能にした.また,気温・風速・放射温・露点温度より算出できる様に,湿り等価温度の定式化を行った. 次に,屋外環境における平均放射温度の算出に大きな影響を及ぼす,衣服の日射吸収率の実測を行った.熱流計を用いた日射吸収率測定装置を作製し,屋外環境に曝露後,熱流計の実測値および環境要素の実測値から日射吸収率を算出した.皮膚の日射吸収率に比し,夏服では低い値が算出された.また,同じく平均放射温度に影響を及ぼす壁面の日射反射率を実測した.三つの日射計を用いた連立方程式を解くことにより,壁面の平均日射反射率を算出した.これらの日射吸収率・反射率を考慮した新たな平均放射温度は,既存の平均放射温度よりも低い値が得られた. さらに,これまでは屋外熱環境の評価指標としてSET^*を用いてきたが,新たな温熱指標を提案するために,PMVの熱負荷の概念を利用して,必要調節熱量RTRを定義した.RTRは,PMVの熱負荷とは異なり,実在環境における放熱量と,快適な皮膚温を維持した人間が実在環境において放出するであろう放熱量から蒸汗放熱量を除いた熱量との差で表され,快適時の皮膚温を維持するための必要調節熱量と考えることが出来る.このRTRを,屋外環境における被験者実験データ用いて,人の温冷感と結び付けることにより,新たな温熱指標である予想温冷感ETSを提案した.ETSは,従来のSET^*に比し,屋外環境における人の温冷感を良く表す結果となった.これは,ETSが屋外環境における被験者実験データを基に作成された指標であるためと考えられる.但し,ETSの適用範囲は,被験者実験を行った環境に限定されるため,より幅広い環境で適用可能にするために,さらに多くの実験を行う必要がある.
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