2002 Fiscal Year Annual Research Report
虚血神経細胞死におけるモードスイッチの分子基盤に関する研究
Project/Area Number |
02J03735
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
藤田 亮介 長崎大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細胞死モードスイッチ / ネクローシス / アポトーシス / 虚血 / カルシウム / グルコース |
Research Abstract |
本年度は本研究目的である虚血神経細胞におけるモードスイッチの分子基盤の解明を行うべく、初代培養神経細胞を用いて検討を行った。神経細胞を培養開始直後から無血清低密度で培養するとネクローシスが引き起こされ、培養密度を高密度にすることで細胞死がアポトーシスにモードスイッチすることを見出した。細胞死モードスイッチは高密度培養上清(CM)を添加した低密度神経細胞でも認められた。CMによる細胞死モードスイッチのメカニズムの解析によって、CMがプロテインキナーゼC(PKC)の活性化を介して細胞内ATPを上昇させネクローシスを抑制する一方で、ミトコンドリアからのチトクロームcの遊離を引き起こしアポトーシスに細胞死をモードスイッチさせることを生化学的、免疫組織化学的な手法さらに電子顕微鏡観察により明らかにした。さらにCMより発見していたNDIについても同様のメカニズムを介して、細胞死モードスイッチ作用を示すことを見出した。NDIはミクログリアにおいて細胞内[Ca^<2+>]i濃度の上昇を示し、このメカニズムにGi蛋白質とホスホリパーゼCが関与することが明らかとなった。ネクローシスについてその分子機構は殆ど明らかにされていないが、この細胞内ATPの減少を補う目的で培養液中のグルコースを増加させた時、偶然にもネクローシス抑制に加え、アポトーシス誘発が観察された。アポトーシスの誘導にはBaxの発現上昇に続く、ミトコンドリアからのチトクロームcの遊離を引き起こすメカニズムが明らかになり、このメカニズムにPKCが関与することも示唆された。そこで動物個体レベルでのモードスイッチを介した神経保護効果を解析するためマウス網膜虚血によって起きる神経細胞死の系を用いて検討した結果、グルコースの硝子体内投与により、虚血前投与だけではなく虚血後24時間後の投与によっても顕著な神経細胞死保護効果を有することが明らかになった。
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