2002 Fiscal Year Annual Research Report
海洋地殻玄武岩の付加様式の多様性と高圧変成緑色岩の上昇テクトニクス
Project/Area Number |
02J03900
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
植田 勇人 新潟大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 付加体 / 緑色岩 / 高圧変成岩 / 不整合 / テクトニクス / 低度変成作用 / 海山 / 沈み込み帯 |
Research Abstract |
本年度は北海道神居古潭帯・イドンナップ帯・常呂帯,九州三宝山帯,オマーンオフィオライトの調査を行った. 神居古潭帯ではこれまでの研究地域の北方延長における高圧変成付加体と不整合の広域分布を把握し,新たな不整合露頭を発見した.またSEMとEDSの併用による分析の結果,アルカリ輝石等の微細変成鉱物中に組成累帯が認められ,付加体形成〜上昇時の温度-圧力-変形履歴を記録していることがわかった. 神居古潭・イドンナップ両帯と比較するため,常呂帯仁頃層群と九州三宝山帯の海山型付加体を調査した.常呂帯では,多くの付加体で欠落している極低変成度から高圧変成部への移行を連続して追えることを認めたほか,従来海山に伴う堆積物と混同されていた火山砕屑性の海溝充填堆積物を識別した.三宝山帯では,アンカラマイトを伴う緑色岩〜石灰岩の連続した好露出を認め,イドンナップ帯では分断されている海山の初生層序の検討に着手した. イドンナップ帯奥新冠地域では世界初の事例となる残存島弧起源の付加体について野外調査と分析を進め,一部は論文化し投稿中である.また国内初となる100%岩脈から構成されるシート状岩脈群を発見し,単斜輝石のEPMA分析から,海洋性島弧の背弧拡大時に形成された可能性が高いことが判明した.年度内投稿をめざし執筆中である. オマーンオフィオライトでは,沈み込みを経験していない海洋地殻上部における層序と変質状況を記載した.海洋地殻上部では,噴出時の構造に加えて海底風化や熱水変質によってきわめて不均質となっており,付加時の弱面形成や変成作用をコントロールしている可能性が高い. 小笠原・大町海山の潜航で得られた試料についてざくろ石・角閃石などの鉱物化学的な検討を進め,海洋性島弧域では初の高温・高圧条件で形成された変成岩であり,とくに上昇プロセスが組成累帯構造やざくろ石の分解反応として保存されていることがわかった.
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