2003 Fiscal Year Annual Research Report
効率性の追求を意図した多官能性カロテノイド新規合成法の開拓
Project/Area Number |
02J03956
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
古市 紀之 関西学院大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 多官能性カロテノイド / 新規合成戦略 / Peridinin / Paracentrone / P457 / Peloruside A |
Research Abstract |
天然に広く分布するカロテノイドは、光合成における補助集光色素として、あるいは生体内で生成した活性酸素の消去剤として大きな役割を担っている。比較的単純な構造のカロテノイドの合成は歴史的なものであり、これまでに多くの方法論が開発されてきた。しかし一方、高度に官能基化されたものに関しては十分に検討されておらず、立体化学の制御や収率の面において解決すべき問点が残されていた。 我々は昨年度までに、Sharpless不斉エポキシ化、Pd触媒クロスカップリング、そして改良Julia反応の実現を基盤として、多官能性カロテノイドPeridininの全合成に成功しており、これによりカロテノイド新規合成戦略を提唱している。そこで、本年度は、我々が提唱した方法論の一般的な有効性を示すべく、分子末端にケトン基を有するParecentrone、そして配糖体P457の全合成に着手した。 Paracentroneの合成においては、Sharpless不斉エポキシ化によるシクロヘキサン環上酸素官能基の立体化学の制御、そしてPd触媒sp2-sp2、sp-sp2クロスカップリング反応による共役ポリエン鎖の構築を鍵反応とし、その全合成に成功した。また、P457アグリコンの合成に関しては、目的とする立体化学を持つ3つのフラグメントの合成に成功しており、現在、改良Julia反応によるこれらセグメントの結合を検討しているところである。 このように、Peridinin、及びParacentroneの全合成、またP457の3つのフラグメントの合成を達成し、我々が提唱した新規方法論がカロテノイド合成に対して非常に有用であることを示すことができた。 また、海外派遣先の米国Pennsylvania大学Smith研究室においては、高い抗腫瘍活性、微小管安定化作用を有し、多くの研究者の注目を集めているPeloruside Aの全合成研究に携わり、これまでに不斉Evans、Mukaiyama-aldol反応、そしてSmith研で開発されたDithiane Linchpin Couplingなどを鍵反応とし、2つのハーフセグメントのグラムスケールでの供給が可能な効率良い合成ルートを確立した。
|