2002 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ成熟神経系幹細胞の増殖・増殖停止・分化を制御する微小環境の解析
Project/Area Number |
02J03966
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
加藤 健太郎 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ショウジョウバエ / 成体脳 / 増殖細胞 / 触角神経索 / グリア細胞 / 神経細胞 / BrdU |
Research Abstract |
ショウジョウバエ成体脳における増殖細胞の有無を蛹期後期から羽化50日後(寿命は60日程度)まで解析した。キノコ体に関わる神経幹細胞はもっとも長く分裂を続け、羽化直前に分裂を終えると報告がある。蛹期後期にbrdUを注入したところ(DNA合成細胞が標識される)、キノコ体神経幹細胞だけでなく触角神経索周辺にもBrdU陽性細胞が観察された。羽化後のショウジョウバエにbrdUを餌として与えて解析したところ、羽化直後から6日後まで触角神経索周辺にBrdU陽性細胞が観察され、それ以降はほぼ観察されなかった。 観察されたBrdU陽性細胞がDNA合成のみを行う多糸化細胞であるのか、あるいは分裂細胞であるのかを確かめるために、2時間のbrdU標識後すぐに固定した試料と、さらに5日間BrdUを含まない餌で飼育し固定した試料で、brdU陽性細胞数を比較した。その結果、標識直後よりも5日後の試料に、より多くのbrdU陽性細胞が観察された。また熱ショック誘導的に分裂細胞の一方の子孫細胞を標識するMARCM法を利用した解析の結果、触角神経索周辺に陽性細胞が観察された。以上の結果から、既知の分裂細胞よりも長く、また成体脳においても分裂する細胞が触角神経索周辺に存在することが明らかになった。 BrdU陽性細胞の細胞種を同定するために神経細胞マーカーである抗ELAVとグリア細胞マーカーである抗REPO抗体を用いて、brduとの3重染色を行い解析したところ、分裂能を持つ細胞はグリア細胞であり、グリア細胞と同定できなかった細胞の2種類の細胞を産み出していることが示唆された。今回、観察された分裂細胞は胚期、蛹期の神経幹細胞とは異なる。一方、ほ乳類の成体脳にみられる神経幹細胞はグリア細胞であることが知られている。今回、細胞種を同定できなかったBrdU陽性細胞があり、神経細胞に分化している可能性を否定できない。ほ乳類との類似性を検証するため、今後より詳細な解析行う予定である。
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