2004 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ成熟神経系幹細胞の増殖・増殖停止・分化を制御する微小環境の解析
Project/Area Number |
02J03966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 健太郎 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ショウジョウバエ / 成体脳 / 増殖細胞 / tumor necrosis factor / グリア細胞 / プログラム細胞死 / eiger / グリオーシス |
Research Abstract |
昨年度までに、ショウジョウバエ成虫脳において、羽化後の数日間、触角神経索周辺に位置するグリア細胞が増殖することを報告した。神経細胞のプログラム細胞死が同領域、同時期に進行していることを見いだしたとともに、グリア細胞の増殖を引き起こしていることを明らかにした。また、針による傷害や触覚切除による触角神経索の変性によって、同様のグリア細胞の増殖が引き起こされることが示唆された。本年度は、これらのグリア細胞の増殖が同様の機構によって引き起こされている可能性を検証するために、脊椎動物で傷害時の応答に深く関わっているTNFに着目した。ショウジョウバエのTNF遺伝子の一員であるEigerの変異体では、神経変性に対するグリア細胞の応答が鈍るばかりでなく、プログラム細胞死に応答するグリア細胞の増殖もほぼ抑えられていた。さらに触角神経索周辺部の一部の細胞にeigerが発現していることを確かめた。また羽化直後のプログラム細胞死は野生型と同程度に起きていることから、Eigerはこの細胞死には関わらないと考えられる。以上の結果は、損傷におけるグリア細胞の増殖ばかりでなく、神経細胞のプログラム細胞によるグリア細胞の増殖にもEigerが介在していることを示唆する。興味深いことに、eiger mutantでは神経細胞のプログラム細胞死が羽化3日後には野生型よりも多く起きていた。このことはEigerあるいはそれによって誘導されるグリア細胞の増殖が、プログラム細胞死によって引き起こされる二次的な影響を抑えていると考察される。本研究によって、成熟過程の脳における神経細胞のプログラム細胞死を補償する機構が存在すること、それが神経傷害への応答と少なくとも一部は同じ機構によっているという、いままでにない新しい知見を得ることができた。現在、国際誌に投稿をするべく準備を進めている。また、成虫脳全体の細胞数とその経時変化を計測する目的で共同研究を行っており、成果の一部は紀要として報告された。
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Research Products
(1 results)