2003 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ秒温度ジャンプ・時間分解共鳴ラマン分光による蛋白質の熱巻き戻り初期過程の研究
Project/Area Number |
02J03974
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
長野 恭朋 岡崎国立共同研究機構, 統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛋白質の熱巻き戻り / 蛋白質の高温変性 / 蛋白質の低温変性 / 時間分解紫外共鳴ラマン / ナノ秒温度ジャンプ / アポミオグロビン / 蛋白質の高次構造 |
Research Abstract |
本研究は、過渡的な温度変化による蛋白質高次構造変化をナノ秒の時間分解能で解明することを目的とする。ナノ秒の時間領域での溶液中の温度変化を追跡するため、無機イオン及び有機溶媒について可視非共鳴ラマン測定し、ストークス線とアンチストークス線を同時に測定した。ストークス線とアンチストークス線の強度比から温度を精度良く決定する必要があり、レーリー散乱を除くためにノッチフィルターを購入した。しかしながら、値はレーリー散乱強度や水などの低振動モードによるバックグラウンドの影響を強く受けるため、満足のいく結果を得るには至っていない。精度向上とデータ処理の効率化を図るためプログラムを自作し、データからの温度の見積もりと結果の可視化のための計算時間は大幅に短縮した。 温度ジャンプのための光源として重水素ガスの誘導ラマン散乱を利用し、Nd-YAGレーザーの基本波1064nmから近赤外1.56μmのレーザー光をエネルギー変換効率24%で得られるようにシステムを整備した。紫外領域におけるレーリー散乱を除くためのトリプル分光器を使用し、紫外光検出用CCDカメラを新たに購入、分光器に取り付けた。CCDカメラやレーザーなどの測定システムを制御するためのソフトウェアを新たに購入し、自動化のためのプログラムを現在製作中である。 紫外光源としては、既存のNd-YAGレーザーに非線形結晶を取り付け、第4高調波266nmのレーザー発振を可能とした。これを紫外共鳴ラマン測定のプローブとして用いると共に、水素ガスの誘導ラマン散乱によりさらに短波長の紫外光を得るため、ラマンシフターを製作した。これにより励起波長を変えての共鳴ラマン測定が可能となり、芳香族アミノ酸をより選択的に測定できると期待される。 装置の整備と平行して芳香族アミノ酸のモデル化合物の紫外共鳴ラマン測定を行い、紫外光照射によるラジカルの生成や安定性に対する金属イオンの効果についても検討している。
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