2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ秒温度ジャンプ・時間分解共鳴ラマン分光による蛋白質の熱巻き戻り初期過程の研究
Project/Area Number |
02J03974
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
長野 恭朋 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛋白質の熱巻き戻り / 蛋白質の高温・低温変性 / 蛋白質の高次構造 / 時間分解共鳴ラマン / ナノ秒温度ジャンプ / 紫外共鳴ラマン / シトクロムc / シトクロムc酸化酵素 |
Research Abstract |
本研究は、過渡的な温度上昇による蛋白質高次構造変化をナノ秒の時間分解能で解明することを目的とした。ナノ秒の時間領域での溶液の温度変化を追跡するため、無機イオン及び有機溶媒について、可視領域でストークス線とアンチストークス線の同時測定を行い、それぞれのラマン線の強度比から温度を求めた。解析用プログラムを作成することで精度を向上させ、解析に要する時間も大幅に短縮した。 温度ジャンプのための光源として、Nd-YAGレーザーの基本波1064nmを重水素ガスの誘導ラマン散乱によりシフトさせた1560nm近赤外光を使用し、24%のエネルギー変換効率が得られるまでにシステムを整備した。また、水素ガスラマンシフターと組み合わせることで、Nd-YAGレーザーの高調波532/355/266nmに加えて、遠紫外から可視域までをほぼカバーしたラマン散乱励起光を利用可能とした。温度ジャンプ用レーザーとラマン散乱励起用レーザー、二つのレーザー光をナノ秒からミリ秒の遅延時間をおいてサンプルに照射しラマンスペクトルを測定することで、温度上昇に伴う蛋白質高次構造変化に関する情報が得られる。シトクロムcについて、定常状態での温度変化の測定は既に完了した。 装置の整備と平行し、レーザー波長変換やラマン測定に慣れるという意味も含めて、シトクロムc酸化酵素Cu_Bサイトモデル錯体を紫外共鳴ラマン法により研究した。基底状態分子については、220から290nmのラマン励起光を用いることで、部位選択的にラマンスペクトルが得られることを示した。また、シトクロムc酸化酵素の機能を分子レベルで解明するためには、その高酸化状態、特にフェノキシルラジカルの性質の理解が不可欠であるが、フェノール・イミダゾール・Cu^<2+>がそれぞれ共有結合で結ばれたユニットにおいては、ラジカル生成効率が極端に低下することを見出した。このことは、Cu^<2+>によるフェノキシルラジカルの消光を意味しており、酵素活性部位におけるフェノール・イミダゾール・Cu^<2+>部位の物理化学的役割を理解する上で極めて重要である。
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Research Products
(1 results)