2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J03981
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
大塚 岳夫 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分子性伝導体 / 直流伝導度 / 極低温 / ランタノイド / f電子 / 金属伝導 / 超伝導 / 分子磁性 |
Research Abstract |
昨年度末に新たに研究室に導入された極低温実験のための希釈冷凍機を、15T超伝導マグネットと組み合わせ、極低温、強磁場下において物性測定を行うためのシステムを制作している。さらに直流伝導度測定装置を新たに導入し、これまでの交流伝導度測定装置に置き換えることにより、さらに極小電流にて電気伝導度の測定を行うことができるよう、システムの改良を進めている。また、電気伝導度測定のみにとどまらず、磁化率測定をも可能にすることで、固体電子物性の総合評価を行うことができるよう鋭意改良中である。 これと平行して、局在f電子スピンを持つランタノイドイオンを中心金属に持つアニオンを用いた電気伝導性錯体の研究において、有機ドナー分子の一種BDT-TTP(=2,5-bis(1,3-dithiol-2-ylidene)-1,3,4,6-tetrathiapentalene)を用いた錯体が、軽希土類のみにとどまらず、Ybまでのすべての重希土類イオンに対して得られることが明らかになった。こららの塩の結晶構造は、最も軽いLa,Ceイオンの錯体についてのみ他形の結晶を与えるが、それ以外のすべてのランタノイドイオンに対して同形の結晶構造を与えることも併せて示され、この結晶構造においては必ず安定な金属伝導性が得られる事を実験的に示すことができた。このことは、ランタノイドイオンのイオン半径はランタノイド収縮のためにランタノイド系列の中でも非常に大きく異なっているいることや、これまで局在f電子スピンを導入した有機伝導体の例が非常に限られており、ランタノイド系列内にわたって系統的に結晶が得られた例が皆無である事などに照らしても非常にユニークな系の創出に成功した例であると言うことができる。 また、さらに小さいアニオンを目指して、ランタノイドのヨウ素錯体を用いた錯体を検討したところ、有機ドナーのヨウ素塩が生成した。電解結晶化においてはヨウ素イオンが通常トリヨージド錯体分子へと不均化を起こすが、これに逆らってヨウ素塩を得る一つの方法としての期待が持たれる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 崔亨波, 大塚岳夫, 小林明子, 武田直也, 石川征靖, 御崎洋二, 小林速男: "Structural, Electrical and Magnetic Properties of a Series of Molecular Conductors Based on BDT-TTP and Lanthanoid Nitrate Complex Anions (BDT-TTP=2,5-bis(1,3-dithiol-2-ylidene)-1,3,4,6-tetrathiapentalene)"Inorganic Chemisry. 42(19). 6114-6122 (2003)
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[Publications] 崔亨波, 大塚岳夫, 小林明子, 御崎洋二, 小林速男: "Structural and electrical properties of novel molecular conductors based on extended-TTF donors BDT-TTP and I-anions."Bulletin of the Chemical Society of Japan. 76(1). 97-102 (2003)