2002 Fiscal Year Annual Research Report
高磁場/高周波時間領域ESR分光学による新規量子磁気光機能の開拓
Project/Area Number |
02J04008
|
Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
松岡 秀人 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 高磁場 / 高周波ESR / 高スピンCo(II) / 高スピンEu(II) / 軌道角運動量 / 水素結合集積型 / 長残光性 / 高次の微細構造項 / 固有共鳴磁場法 |
Research Abstract |
まず、スピンサイトが大きな軌道角運動量に由来する磁気モーメントを有する低次元水素結合集積型擬八面体高スピンCo(II)(S=3/2,I=7/2)錯体系を設計・合成し(阪教育大との共同研究)、液体ヘリウム温度下における多周波(X, Q, W-band)ESRおよびSQUID測定を行った。有効軌道角運動量L'=1を仮定し、磁化率の解析を行ったところ、軸性まで考慮することによりその温度変化を説明することができた。また、homemadeの固有共鳴磁場法を用いたスペクトルシミュレーション法により、得られた実測のESRスペクトルの概略を説明することができた。より精密なスピンハミルトニアンパラメータを決定するため、現在単結晶試料を用いた実験を行っている。なお、これらの成果は中国およびスペインで開催された国際会議(ICSMおよびICMM)において発表し、また学術雑誌Synthetic Metals に発表予定(印刷中)である。 次に、本申請の研究では、粒径をミクロンサイズで制御したEu(II)-doped long-lasting luminescent materials(粉末試料)を調整した。室温下での発光・励起スペクトルおよび液体ヘリウム温度下における多周波ESRスペクトルにおいて、粒径依存性を観測した。得られたCW-ESRスペクトルをhomemadeのスペクトルシミュレーションプログラムにより解析し、一般に無配向試料からは決定することが難しい高次の微細構造項を含むスピンハミルトニアンパラメータを精密に決定するとともに、磁気的に異なるすべてのEu(II)サイトを分光学的に分離することに成功した。また、得られた微細構造パラメータをempirical superposition modelにより解析し、微細構造テンソルの結晶軸に対する配向を決定した。これらの結果と、文献において報告されている結果との関連から、得られた粒径依存性はホスト結晶の化学量論比の違いによるものと結論付けた。さらに、長残光メカニズムに関与する開殼系励起状態を時間分解ESRにより初めて観測することに成功した。得られたスペクトルと長残光性との相関を明らかにするため、現在液体ヘリウム温度下における発光測定を行っている。なお、これらの成果はポーランドで開催された国際会議(AMPERE)、国内学会(ESR討論会)、および成書に発表し、さらに現在学術雑誌に投稿準備中である。 さらに本申請の研究では、高スピンEu(II)イオンを内包する金属フラーレン(凍結溶液試料)の電子・分子構造を明らかにするため、液体ヘリウム温度下における多周波ESRの測定を行った。金属内包フラーレンに対しては初めて高次の微細構造項を含めたスペクトル解析を行い、精密なスピンハミルトニアンパラメータを決定した。これらの成果は、ドイツで開催された国際シンポジウムにおいて発表し、さらに現在学術雑誌に投稿準備中である。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] H.Matsuoka et al.: "Pseudo-octahedral high-spin Co(II) complexes with orbitally degenerate ground states as studied by SQUID and ESR spectroscopy"Synthetic Metals. (印刷中).
-
[Publications] H.Matsuoka et al.: "FT-Pulsed ESR / 2D Electron Spin Transient Nutation Spectroscopy of Lanthanoid Ion Eu^<2+>(^8S_<7/2>) in a CaF_2 Single Crystal : Transition Moment Spectroscopy"Applied Magnetic Resonance. (印刷中).
-
[Publications] H.Matsuoka et al.: "EPR in the 21^<st> Century : Basics and Applications to Material, Life and Earth Sciences <A.Kawamori, J.Yamauchi, H.Ohta (Eds.)>"Elsevier Science. 830(6) (2002)
-
[Publications] T.Takui et al.: "EPR of Free Radicals in Solids -Trend in Methods and Applications -<A.Lund and M.Shiotani (Eds.)>"Kluwer Academic Publishers (印刷中).